報告する

20 April, 2022

金の戦略的役割

ワールド ゴールド カウンシルの分析によると、金は明らかに、株式や債券、総合型ポートフォリオを補完します。富を蓄積する手段として、またシステミックリスクや通貨の下落、インフレのヘッジ手段として、金は歴史的にポートフォリオのリスク調整後リターンを改善し、プラスのリターンを実現し、市場ストレス時に債務を返済するための流動性を提供してきました。

リターンの源

投資家は昔から金のことを、不確実な時代に利益をもたらす資産と見なしてきました。歴史的に、好況時にも不況時にも、長期的にプラスのリターンを生み出してきました。約半世紀を振り返ってみると、米ドル建ての金価格は、1971 年 10に金本位制が崩壊した後 11、年率平均 11%のペースで上昇してきました。この期間の金の長期リターンは株式に匹敵し、債券を上回ります 12。さらに、ここ 5 年、10 年、20 年の金のパフォーマンスは他の
多くの主要資産クラスを上回っています(4 ページの図 2図 3)。

この二面性は金に多様な需要の源があることを反映しており、金と他の投資資産の差別化要素になっています。金は誰の債務でもなく、世界的に価値が認められていて交換手段として機能することから、しばしば長期的に資産を守り増やすために利用されます。

金にはまた、世界中の消費者が評価する宝飾品市場経由の需要もあります。そしてエレクトロニクス製品の重要な構成部品でもあります13。このような多種多様な需要の源が、金に際立ったレジリエンス、すなわち好況時にも不況時にも確かなリターンを実現するポテンシャルを与えています(6ページの図7)。

 

図 2:過去10年、リスク資産のパフォーマンスが好調だったにもかかわらず、金は良好なパフォーマンスを記録

過去10年、リスク資産のパフォーマンスが好調だったにもかかわらず、金は良好なパフォーマンスを記録

過去5年、10年の年間平均リターン*

過去10年、リスク資産のパフォーマンスが好調だったにもかかわらず、金は良好なパフォーマンスを記録
過去5年、10年の年間平均リターン*
*2011年12月31日~2021年12月31日の米ドル建てリターン。 個々のインデックスについては4ページの図 3を参照。 Goldhub.comの以下のセクションを参照: Gold returns。 出所:ブルームバーグ、ICEベンチマーク・アドミニストレーション、ワールド ゴールド カウンシル

出所: ブルームバーグ, ICEベンチマーク・アドミニストレーション, ワールド ゴールド カウンシル; 免責事項

*2011年12月31日~2021年12月31日の米ドル建てリターン。個々のインデックスについては4ページの図 3を参照。Goldhub.comの以下のセクションを参照: Gold returns。

 

図 3:過去20年の金のパフォーマンスは、幅広いポートフォリオ要素のほとんどを上回る*

過去20年の金のパフォーマンスは、幅広いポートフォリオ要素のほとんどを上回る*

主な世界的資産の米ドル建て年間平均リターン*

過去20年の金のパフォーマンスは、幅広いポートフォリオ要素のほとんどを上回る*
主な世界的資産の米ドル建て年間平均リターン*
*2001年 12月 31 日~ 2021年 12月 31 日のリターン。 リターン計算(米ドル)に使用した指数などは以下の通り。「現物」:ICE BofA 米国 3 カ月物短期国債インデックス、「米国債券」:ブルームバーグ・バークレイズ米国 総合トータルリターン(米ドル建て為替ヘッジなし)、「米国債」:ブルームバーグ・バークレイズ米国債トータルリターン (米ドル建て為替ヘッジなし)、 「グローバル債券」:ブルームバーグ・バークレイズグローバル総合トータルリターンインデックス(米ドル建て為替ヘッジなし)、「新興国債券」:ブルームバーグ・バーク レイズ 新興国米ドル総合トールリターンインデックス(為替ヘッジなし)、「米国株式」:MSCI デイリー・トータルリターン総合米国インデックス(米ドル)、 「MSCI EAFE」:MSCI デイリー・トータルリターン総合 EAFE インデックス(米ドル)、「新興国株式」:MSCI デイリー・トータルリターン総合新興国インデックス(米 ドル)、「コモディティ」:ブルームバーグ商品指数トータルリターン、「ヘッジファンド」:ヘッジファンド・リサーチ HFRI ファンド総合指数。 「REIT」:FTSE 米国不動産トータルリターン(米ドル)、「金」:LBMA 金価格午後決め値(米ドル)。 Goldhub.com の以下のセクションを参照 : Gold returns。 出所 : ブルームバーグ、ICE ベンチマーク・アドミニストレーション、ワールド ゴールド カウンシル

出所: ブルームバーグ, ICEベンチマーク・アドミニストレーション, ワールド ゴールド カウンシル; 免責事項

*2001年 12月 31 日~ 2021年 12月 31 日のリターン。リターン計算(米ドル)に使用した指数などは以下の通り。「現物」:ICE BofA 米国 3 カ月物短期国債インデックス、「米国債券」:ブルームバーグ・バークレイズ米国総合トータルリターン(米ドル建て為替ヘッジなし)、「米国債」:ブルームバーグ・バークレイズ米国債トータルリターン(米ドル建て為替ヘッジなし)、「グローバル債券」:ブルームバーグ・バークレイズグローバル総合トータルリターンインデックス(米ドル建て為替ヘッジなし)、「新興国債券」:ブルームバーグ・バークレイズ新興国米ドル総合トールリターンインデックス(為替ヘッジなし)、「米国株式」:MSCI デイリー・トータルリターン総合米国インデックス(米ドル)、「MSCI EAFE」:MSCI デイリー・トータルリターン総合 EAFE インデックス(米ドル)、「新興国株式」:MSCI デイリー・トータルリターン総合新興国インデックス(米ドル)、「コモディティ」:ブルームバーグ商品指数トータルリターン、「ヘッジファンド」:ヘッジファンド・リサーチ HFRI ファンド総合指数。「REIT」:FTSE 米国不動産トータルリターン(米ドル)、「金」:LBMA 金価格午後決め値(米ドル)。 Goldhub.com の以下のセクションを参照 : Gold returns

インフレに勝ち、デフレと戦う

金は昔からインフレの防衛手段と見なされており、この点はデータも裏付けています。過去 50 年の米ドル建て年間平均リターンは 11%で、米国と世界の消費者物価指数(CPI)の上昇率を上回ります 14

また、金は極端な高インフレからも投資家を保護します。インフレ率が 3% を超えた年の金価格は、年率平均 14% 上昇しました(図 4)。こうした数値は、さらなるインフレ水準の高まりにより著しく上昇します。15 つまり金は長期的に、資本を守るだけでなく増やすことにも寄与してきたのです。

調査によれば、金はデフレ下でも堅調な推移が期待できます 16。デフレ期の特徴として、低金利、消費や投資の低迷、金融ストレスがありますが、これらはすべて金の需要を押し上げる傾向があります。

 

図 4:歴史的に金は高インフレ環境で上昇し、幅広いコモディティのパフォーマンスをしのぐ

歴史的に金は高インフレ環境で上昇し、幅広いコモディティのパフォーマンスをしのぐ

金と商品の米ドル建て名目リターンと年間インフレ率*

歴史的に金は高インフレ環境で上昇し、幅広いコモディティのパフォーマンスをしのぐ
金と商品の米ドル建て名目リターンと年間インフレ率*
*2021年 12 月 31 日現在。前年同期比に基づく(米ドル)。使用したデータは 以下の通り。「金」:2000 年以降の LBMA 金価格午後決め値、「コモディティ」 はブルームバーグ商品指数、「インフレ」:1971年1 月以降の米国 CPI。 出所:ブルームバーグ、ICE ベンチマーク・アドミニストレーション、 ワールド ゴールド カウンシル

出所: ブルームバーグ, ICEベンチマーク・アドミニストレーション, ワールド ゴールド カウンシル; 免責事項

*2021 年 12 月 31 日現在。前年同期比に基づく(米ドル)。使用したデータは以下の通り。「金」:2000 年以降の LBMA 金価格午後決め値、「コモディティはブルームバーグ商品指数、「インフレ」:1971 年 1 月以降の米国 CPI。

不換通貨を上回るパフォーマンス

長引く低金利やドルの見通しに対する懸念は、金保有の機会費用に対する認識に影響を与えるため、投資家の需要を押し上げてきました。

歴史的に、主要通貨の交換レートは金価格に合わせて固定されていました。しかし 1971 年に米国の金本位制が終了し、実質的にブレトン・ウッズ体制が崩壊したことで、状況が変化します 17。それ以降、交換手段としての金のパフォーマンスは、ごくわずかな例外を除いて、すべての主要通貨と商品を大きく上回ってきました(図 5)。金の優れたパフォーマンスは、金本位制の終了直後に特に際立ちました。この堅調なパフォーマンスを支えた重要な要素の 1 つは、金の長期的な供給量の伸びが、過去 20 年で年率約 1.6% と、ほとんど変わらなかったことです 18

これとは対照的に、不換通貨は金融政策を支えるために無限に発行することが可能であり、その典型例が世界的な金融危機後の量的緩和策です 19。近年では、世界のマネーサプライの急速な拡大と、低金利からマイナス金利という環境のおかげで、金が世界の国債(米国債など)のパフォーマンスを上回り、世界のマネーサプライに追従するという点で最適な状況が生まれています(6ページの図 6)。

 

図 5:主要通貨およびコモディティの購買力は、金と比較して大幅に低下

主要通貨およびコモディティの購買力は、金と比較して大幅に低下

通貨と各種コモディティの、金との相対価値(2000 年 1 月を 100 とする)*

主要通貨およびコモディティの購買力は、金と比較して大幅に低下
通貨と各種コモディティの、金との相対価値(2000年1 月を 100 とする)*
* 2021 年 12 月 31日現在。「金」との間の相対的な価値 : 2000 年以降の LBMA 金価格午後決め値、「コモディティ」はブルームバーグ商品指数、および主要通貨。 コモディティと通貨価値を金の重量(オンス)に換算し、2000年1 月を 100 として指数化。 Goldhub.com の以下のセクションを参照 : Gold prices。 出所 : ブルームバーグ、ICE ベンチマーク・アドミニストレーション、ワールド ゴールド カウンシル

出所: ブルームバーグ, ICEベンチマーク・アドミニストレーション, ワールド ゴールド カウンシル; 免責事項

* 2021 年 12 月 31 日現在。「金」との間の相対的な価値 : 2000 年以降の LBMA 金価格午後決め値、「コモディティ」はブルームバーグ商品指数、および主要通貨。コモディティと通貨価値を金の重量(オンス)に換算し、2000 年 1 月を 100 として指数化。 Goldhub.com の以下のセクションを参照 : Gold prices。

 

図 6:金価格は世界のマネーサプライの拡大に追従し、長期的には米国短期国債のパフォーマンスを上回る

金価格は世界のマネーサプライの拡大に追従し、長期的には米国短期国債のパフォーマンスを上回る

世界の M2 の伸び、米国 3 カ月物短期国債のトータルリターン、金価格 *

金価格は世界のマネーサプライの拡大に追従し、長期的には米国短期国債のパフォーマンスを上回る
世界の M2 の伸び、米国 3 カ月物短期国債のトータルリターン、 金価格 *
* 2021年12 月 31 日現在。データ入手の問題のため、1973 年のデータを始点とする。 世界の M2 を算出するには、まず利用可能な集団として、オックスフォード・エコノミクスが提供する各国の M2 を米ドル建てで合計する(データ品質の問題によりベネズエラは除外)。次にこの合計値を、1973年1 月を 100 として再調整する。米国 3 カ月物短期国債のトータルリターンは、米国 3 カ月物短期国債の利回りに基づいた累積リターンを用い、1973年1 月を 100 として再調整して算出。LBMA 金価格午後決め値(米ドル建て)の金価格。 出所:ブルームバーグ、ICE ベンチマーク・アドミニストレーション、オックスフォード・エコノミクス、ワールド ゴールド カウンシル

出所: ブルームバーグ, ICEベンチマーク・アドミニストレーション, オックスフォード・エコノミクス, ワールド ゴールド カウンシル; 免責事項

* 2021 年 12 月 31 日現在。データ入手の問題のため、1973 年のデータを始点とする。世界の M2 を算出するには、まず利用可能な集団として、オックスフォード・エコノミクスが提供する各国の M2 を米ドル建てで合計する(データ品質の問題によりベネズエラは除外)。次にこの合計値を、1973 年 1 月を 100 として再調整する。米国 3 カ月物短期国債のトータルリターンは、米国 3 カ月物短期国債の利回りに基づいた累積リターンを用い、1973 年 1 月を 100 として再調整して算出。LBMA 金価格午後決め値(米ドル建て)の金価格。

有効な分散投資

有効な分散投資方法を見つけることは時として難しいものです。市場の不透明性が増して変動幅が顕著になると、リスクオン/リスクオフの投資判断を一因として、多くの資産は相関性が高まります。その結果、分散手段と言われるものの多くは、肝心なときに投資家のポートフォリオを守ることができません。

その点、金は異なっていて、株式やその他のリスク資産が売却される局面で、これらとの負の相関性が高まります(図 7)。世界的な金融危機はまさにその例です。株式や他のリスク資産の価値は暴落し、ヘッジファンド、不動産、そして長年ポートフォリオの分散手段と見なされてきた商品の大半も同じでした。これとは対照的に金は持ちこたえ、2007 年 12 月から 2009 年 2 月までに金の米ドル建て価格は 21%上昇しました 20。そして最近では、2018 年と 2020 年に株式市場の急激な揺り戻しが発生したときも、金はプラスのパフォーマンスを維持しました 21

この堅調なパフォーマンスも、驚くことではありません。システミックリスクの発生時、金はほぼ例外なくプラスのリターンを生み出してポートフォリオ全体の損失を軽減し、特に効果を発揮してきました(7 ページの図 8)。さらに、投資家のポートフォリオの中で流動性の低い資産が売却しにくいとき、過小評価されているとき、不適正な価値をつけられたときに、金を売却することによって負債の返済ができる点も重要です。

しかし金と他資産の相関性は、激動期に投資家の役に立つだけではありません。ポジティブな市場においては、株式やその他のリスク資産との正の相関性も生み出すことができるため、金はバランスの良い効率的なヘッジとなります(7 ページの図 9Gold: an efficient hedge を参照)。

この二面的な利点は、投資商品資産でもあり消費財でもあるという金の二面性によってもたらされます(15 ページの図 18a)。こうした性質を持つ金の長期的なパフォーマンスは、所得の拡大に支えられます。ワールド ゴールド カウンシルの分析も、株価が力強く上昇する局面で、株価と金の相関性が高まる可能性があることを裏付けています。これは、金の消費者需要を支える富の増加の効果に加えて、インフレ率の上昇見込みに対する防衛策を求める投資家の需要によるものです。

リスクが高まる局面で、金は一貫して「質への逃避」の流れの恩恵を受けてきた。

 

図 7:市場の極端な急落時、金は株式に対し、コモディティや米国債よりも強い負の相関を示す

図 7:市場の極端な急落時、金は株式に対し、コモディティや米国債よりも強い負の相関を示す

1973 年以降のさまざまな米国株式市場環境における、米国株式と金、コモディティと米国債の相関性 *

図 7:市場の極端な急落時、金は株式に対し、コモディティや米国債よりも強い負の相関を示す
1973 年以降のさまざまな米国株式市場環境における、米国株式と金、コモディティと米国債の相関性 *
* 2021 年 12 月 31 日現在。関連係数は、以下の米ドルでの週次リターンに基づく。 「米国株式」:S&P500 指数、「コモディティ」:ブルームバーグ商品指数、「米国債」:ブルームバーグ・バークレイズ米国債、「金」:LBMA 金価格午後決め値。なお、データ入手の問題のため 1973 年 1 月以降のデータに基づく。上段の棒グラフは対象全期間の無条件下の相関係数。 中段の棒グラフは、S&P 500 の週次リターンがそれぞれ 2 標準偏差(‘σ’)を超えて下落した場合の相関係数。 下段の棒グラフは、S&P 500 の週次リターンが 3 標準偏差を超えて下落した場合の相関係数。S&P 500 の標準偏差は対象全期間の週次リターンに基づき計算。Goldhub.com の以下のセクションを参照 : Gold correlation。 出所 : ブルームバーグ、ICE ベンチマーク・アドミニストレーション、ワールド ゴールド カウンシル

出所: ブルームバーグ, ICEベンチマーク・アドミニストレーション, ワールド ゴールド カウンシル; 免責事項

*2021 年 12 月 31 日現在。関連係数は、以下の米ドルでの週次リターンに基づく。「米国株式」:S&P500 指数、「コモディティ」:ブルームバーグ商品指数、「米国債」:ブルームバーグ・バークレイズ米国債、「金」:LBMA 金価格午後決め値。なお、データ入手の問題のため 1973 年 1 月以降のデータに基づく。上段の棒グラフは対象全期間の無条件下の相関係数。中段の棒グラフは、S&P 500 の週次リターンがそれぞれ 2 標準偏差(‘σ’)を超えて下落した場合の相関係数。 Goldhub.com の以下のセクションを参照 : Gold correlation。

金は、システミック・リスクが発生した際に安全資産として 機能し利用される

 

図 8:金価格はシステミックリスク発生時に上昇する傾向

金価格はシステミックリスク発生時に上昇する傾向

VIX インデックス * に対する米国株式、国債、金のパフォーマンス

金価格はシステミックリスク発生時に上昇する傾向
VIX インデックス * に対する米国株式、国債、金のパフォーマンス
* 2020年 12月 31 日現在。リターン計算(米ドル)の対象は以下の通り。「米国株式」:S&P500 指数、「米国債」:ブルームバーグ・バークレイズ米国債、「金」:LBMA 金価格午後決め値、「VIX」:CBOE VIX 指数。VIX は 1990 年1 月以降のみ利用可能。それ以前の出来事については、代替として 30 日の S&P 500 ボラティリティの年率換算値を用いる。 適用した期間 : ブラックマンデー : 1987年9 月~ 1987年11 月、LTCM:1998 年 8 月、ドット・コム:2000年3 月~ 2001年3 月、9 月 11 日:2001 年 9 月、2002 年景気後退:2002年3月~ 2002年7月、世界的な金融危(GFC):2007年10 月~ 2009年2 月、ソブリン危機Ⅰ:2010 年 1 月~2010年6 月、ソブリン危機 II:2011年2月~ 2011年10 月、英国の EU 離脱:2016 年 6 月 23 日~2016年6 月 27 日、2018 年の景気減速:2018年10 月~ 2018年12 月、2020 年景気減速:2020年1 月 31 日~ 2020年3 月 31 日。 出所:ブルームバーグ、ICE ベンチマーク・アドミニストレーション、ワールド ゴールド カウンシル

出所: ブルームバーグ, ICEベンチマーク・アドミニストレーション, ワールド ゴールド カウンシル; 免責事項

* 2020 年 12 月 31 日現在。リターン計算(米ドル)の対象は以下の通り。「米国株式」:S&P500 指数、「米国債」:ブルームバーグ・バークレイズ米国債、「金」:LBMA 金価格午後決め値、「VIX」:CBOE VIX 指数。 VIX は 1990 年 1 月以降のみ利用可能。それ以前の出来事については、代替として 30 日の S&P 500 ボラティ リティの年率換算値を用いる。 適用した期間 : ブラックマンデー : 1987 年 9 月~ 1987 年 11 月、LTCM:1998 年 8 月、ドット・コム: 2000 年 3 月~ 2001 年 3 月、9 月 11 日:2001 年 9 月、2002 年景気後退:2002 年 3 月~ 2002 年 7 月、世界的な金融危機(GFC):2007 年 10 月~ 2009 年 2 月、ソブリン危機I:2010 年 1 月~ 2010 年 6 月、ソブリン危機 II:2011 年 2 月~ 2011 年 10 月、英国の EU 離脱:2016 年 6 月 23 日~ 2016 年 6 月 27 日、2018 年の景気減速:2018 年 10 月~ 2018 年 12 月、2020 年景気減速: 2020 年 1 月 31 日~ 2020 年 3 月 31 日。

資産 市場急落期のパフォーマンス* 市場回復期のパフォーマンス*
  平均値 中央値 平均値 中央値
10% 7% 25% 6%
米国債 11% 10% 13% 5%

*平均値と中央値は図 8図 9 の期間に基づく。

出所:ブルームバーグ、ICE ベンチマーク・アドミニストレーション、ワールドゴールドカウンシル

…しかし、市場の回復局面でも優れたパフォーマンスを示す。

 

図 9:金価格は、システミックな株価急落の後と、それに続く回復期に、良好なパフォーマンスを示す

金価格は、システミックな株価急落の後と、それに続く回復期に、良好なパフォーマンスを示す

株式市場の底打ちから回復(システミックな急落の前の市場水準)までの、金と国債のパフォーマンス

金価格は、システミックな株価急落の後と、それに続く回復期に、良好なパフォーマンスを示す
株式市場の底打ちから回復(システミックな急落の前の市場水準)までの、金と国債のパフォーマンス
* 2020 年 12 月 31 日現在。リターン計算(米ドル)の対象は以下の通り。「米国債」:ブルームバーグ・バークレイズ米国債、「金」:LBMA 金価格午後決め値。図 8 の期間の終了後の期間を適用。ブラックマンデー後:1987年11 月~ 1989 年6月、LTCM 後:1998年8 月~ 1998年11 月、ドットコム後:2001年3月~ 2007年5月、9.11 後:2001 年 9 月~ 2001年11 月、2002 年景気後退後:2002年7 月~ 2004年11 月、GFC 後:2009 年 2 月~2013年1 月、ソブリン危機 I 後:2010年6月~ 2010年10 月、ソブリン危機 II 後:2011 年 10 月~2012年2月、英国の EU 離脱後:2016年6 月~ 2016年7 月、2018 年景気減速後:2018 年 12月~ 2019年6 月、2020 年景気後退後:2020年3月~ 2020年7月。 ** ドットコムバブルの回復基を示す棒グラフは、他のグラフとの差が極端に大きいため、見やすさを維持するため短く表示している。 出所:ブルームバーグ、ICE ベンチマーク・アドミニストレーション、ワールド ゴールド カウンシル

出所: ブルームバーグ, ICEベンチマーク・アドミニストレーション, ワールド ゴールド カウンシル; 免責事項

* 2020 年 12 月 31 日現在。リターン計算(米ドル)の対象は以下の通り。「米国債」:ブルームバーグ・バーク レイズ米国債、「金」:LBMA 金価格午後決め値。 図 8 の期間の終了後の期間を適用。ブラックマンデー後:1987 年 11 月~ 1989 年 6 月、LTCM 後: 1998 年 8 月~ 1998 年 11 月、ドットコム後:2001 年 3 月~ 2007 年 5 月、9.11 後:2001 年 9 月 ~ 2001 年 11 月、2002 年景気後退後:2002 年 7 月~ 2004 年 11 月、GFC 後:2009 年 2 月~ 2013 年 1 月、ソブリン危機 I 後:2010 年 6 月~ 2010 年 10 月、ソブリン危機 II 後:2011 年 10 月~ 2012 年 2 月、英国の EU 離脱後:2016 年 6 月~ 2016 年 7 月、2018 年景気減速後:2018 年 12 月~ 2019 年 6 月、2020 年景気後退後:2020 年 3 月~ 2020 年 7 月。

**ドットコムバブルの回復基を示す棒グラフは、他のグラフとの差が極端に大きいため、見やすさを維持するため短く表示している。

厚みと流動性がある市場

金市場は規模が大きくグローバルで、流動性に優れています。

ワールド ゴールド カウンシルの試算によると、投資家と中央銀行が保有している金現物は約 4 兆 9 千億米ドル相当で、これに加えて証券取引所や相対(OTC)市場で取引されているデリバティブの建玉残高が 1 兆 2 千億米ドルです(14 ページの図 16a)。

また金市場は主な金融市場、例えばユーロ/円、ダウ平均株価よりも流動性が高く、その一方で売買高は米国 1 ~ 3 年物国債や米国短期証券に匹敵します(図 10)。金の売買高は、2021 年
の日次平均で約 1,320 億米ドルでした。同じ期間の OTC スポット取引とデリバティブ契約は 740 億米ドルで、世界各国の取引所で取引される金先物の日次売買高は 560 億米ドルでした。世界中の金を裏付けとする ETF(金  ETF)は 1 日当たり平均 24億米ドル取引されており、これによって金 ETF の流動性は更に高まっています(図 11)。

このように市場に規模と厚みがあるということは、大規模な長期保有投資を行う機関投資家を余裕を持って受け入れられることを意味します。多くの金融市場との著しい違いとして、金の流動性は深刻な金融ストレスの状況下でも枯渇することはなく、このことが金を極めて変動の小さい資産にしています(図 12)。

 

図 10:金の売買高は多くの主要金融資産を上回る

金の売買高は多くの主要金融資産を上回る

各種主要資産の、米ドル建て平均年間取引高*

金の売買高は多くの主要金融資産を上回る
各種主要資産の、米ドル建て平均年間取引高*
* 2021年1 月 1 日~ 2021年12 月 31 日の平均日次取引高。ただしデータ入手の問題から、通貨は 2019年3月の売買高に基づく。 ** 金の流動性には、相対取引(OTC)の推定値、先物取引と金を裏付けとする ETP に関する公表データを含む。 Goldhub.com の以下のセクションを参照 : Gold trading volumes 出所:国際決済銀行、ブルームバーグ、ドイツ金融庁、日本証券業協会、ナスダック、イギリス債務管理庁(DMO)、ワールド ゴールド カウンシル

出所: ブルームバーグ, 国際決済銀行, イギリス債務管理庁(DMO), ドイツ金融庁, 日本証券業協会, ナスダック, ワールド ゴールド カウンシル; 免責事項

* 2021 年 1 月 1 日~ 2021 年 12 月 31 日の平均日次取引高。ただしデータ入手の問題から、通貨は 2019 年 3 月の売買高に基づく。

** 金の流動性には、相対取引(OTC)の推定値、先物取引と金を裏付けとする ETP に関する公表データを含む。 Goldhub.com の以下のセクションを参照 : Gold trading volumes

 

図 11:金は主要投資プラットフォームを横断して流動性を発揮

金は主要投資プラットフォームを横断して流動性を発揮

*2021年のアクセス日時点の平均日次売上高

金は主要投資プラットフォームを横断して流動性を発揮
*2021年のアクセス日時点の平均日次売上高
* 2021年1月1日~ 2021年12月31 日の平均日次売上高金の流動性には、相対取引(OTC)の推定値、先物取引と金を裏付けとするETP に関する公表データを含む。詳しくは、Goldhub.com の Gold trading volumes のセクションを参照 出所:ブルームバーグ、ナスダック、ワールド ゴールド カウンシル

出所: ブルームバーグ, ナスダック, ワールド ゴールド カウンシル; 免責事項

* 2021年1月1日~2021年12月31日の平均日次売上高金の流動性には、相対取引(OTC)の推定値、先物取引と金を裏付けとするETPに関する公表データを含む。詳しくは、Goldhub.comGold trading volumes のセクションを参照 

 

図 12:規模の大きさ、流動性、多様な需要源を持つ金の変動幅は、株式、オルタナティブ、コモディティの多くの指標を下回る

図 12:規模の大きさ、流動性、多様な需要源を持つ金の変動幅は、株式、オルタナティブ、コモディティの多くの指標を下回る

主な資産の 2001 年以降の日次変動幅の平均 *

図 12:規模の大きさ、流動性、多様な需要源を持つ金の変動幅は、株式、オルタナティブ、コモディティの多くの指標を下回る
主な資産の 2001 年以降の日次変動幅の平均 *
* 年率変動幅は、2001年12 月 31 日~ 2021年12 月 31 日の米ドル建て日次リターンに基づいて計算。以下を基に計算。「S&P 500」:S&P 500指数、「新興国株式」:MSCI デイリー総合新興国、「グローバル株式」:MSCI デイリー総合 EAFE、「金」:LBMA 金価格午後決め値、「コモディティ」:ブルームバーグ商品指数、「銀」:LBMA 銀価格、「WTI 原油」:ブルームバーグ WTI 原油、「農業」:S&P 農産物指数、「銅」S&P GSCI 銅オフィシャルクローズ指数、「プライベートエクイティ」:S&P 上場プライベート・エクイティ指数、「REIT」:FTSE 米国不動産 REIT 指数(米ドル)。 Goldhub.com の以下のセクションを参照 : Gold volatility。 出所 : ブルームバーグ、COMEX、ICE ベンチマーク・アドミニストレーション、ワールド ゴールド カウンシル

出所: ブルームバーグ, COMEX, ICEベンチマーク・アドミニストレーション, ワールド ゴールド カウンシル; 免責事項

* 年率変動幅は、2001 年 12 月 31 日~ 2021 年 12 月 31 日の米ドル建て日次リターンに基づいて計算。以下を基に計算。「S&P 500」:S&P 500指数、「新興国株式」:MSCI デイリー総合新興国、「グローバル株式」:MSCI デイリー 総合 EAFE、「金」:LBMA 金価格午後決め値、「コモディティ」:ブルームバーグ商品指数、「銀」:LBMA 銀価格、「WTI 原油」:ブルームバーグ WTI 原油、「農業」:S&P 農産物指数、「銅」S&P GSCI 銅オフィシャルクローズ指数、「プライベートエクイティ」:S&P 上場プライベート・エクイティ指数、「REIT」: FTSE 米国不動産 REIT 指数(米ドル)。 Goldhub.com の以下のセクションを参照 : Gold volatility。

ポートフォリオのパフォーマンスの強化

長期的リターン、流動性、有効な分散手段は、いずれもポートフォリオ全体のパフォーマンスに寄与します。以上の事柄が示唆するのは、金を加えることによって、ポートフォリオのリスク調整後リターンを大いに強化できるということです。

ワールド ゴールド カウンシルが分析した過去 2 年、5 年、10 年、 20 年の投資パフォーマンスは、機関投資家のポートフォリオに対する金のプラスのインパクトを明らかにしています。この分析は、米国の平均的なポートフォリオに金を 2.5%、5%ないしは 10%組み入れていれば、リスク調整後リターンが上昇し、ドローダウンが縮小していた可能性があることを示します(図 13 と表 1)。このプラスのインパクトは、世界的な金融危機以降、特
に顕著です。

従来のバックテストに加えて、リサンプリング・効率最適化法に基づくさらに確実な最適化分析 22 も、金を組み入れることでポートフォリオのパフォーマンスを大いに強化できることを示唆しています。例えば、十分に分散した米ドルベースのポートフォリオの 6 ~ 10%を金に割り当てると、幅広いリスクレベルで、リスク調整後リターンが上昇する可能性があります(10 ページの図 14)。

それぞれの資産アロケーション判断によって、金の「最適」組み入れ量は変化します。しかし分析によると、大まかに言って、ポートフォリオの抱えるリスクが、変動幅、流動性、資産の集中のいずれの意味であれ高いほど、リスクを相殺するために必要な金の組み入れ量が、分析の範囲内において多くなります(10 ページ
図 14)。

ワールド ゴールド カウンシルの分析は、たとえ投資家が想定する金の年間リターンが過去 20 年間の実績の半分にも満たない 4.5%だったとしても、架空のポートフォリオに組み入れる金の最適比率が統計的に有意になりうることも示唆しています(10 ページの図 14)。このことは、インフレ連動債などの他のインフレヘッジ資産をすでに保有している投資家のほか 23、不動産、プライベートエクイティ、ヘッジファンドなどのオルタナティブ資産をすでに保有している投資家についても同様に当てはまります 24

 

図 13:架空の米国の平均的なポートフォリオに、過去20年間、金を組み入れた場合、リスク調整後リターンが上昇

図 13:架空の米国の平均的なポートフォリオに、過去 20 年間、金を組み入れた場合、リスク調整後リターンが上昇

金を含む場合と含まない場合の架空の米国の平均的なポートフォリオのパフォーマンス *

図 13:架空の米国の平均的なポートフォリオに、過去 20 年間、金を組み入れた場合、リスク調整後リターンが上昇
金を含む場合と含まない場合の架空の米国の平均的なポートフォリオのパフォーマンス *
* 2001年12 月 31 日~ 2021 年 12 月 31 日の米ドルのパフォーマンスに基づく。架空の平均的なポートフォリオは、JP モルガン・アセット・マネジメント社とコーリション・グリニッジ社(旧グリニッジ・アソシエイツ社)の市場データ、およびブラックロック社のデータを用いて作成。株式への配分を 48%(ラッセル 3000トータルリターン指数 30%、MSCI ACWI(米国以外)18%)、債券への配分を 28%(バークレイズ米国総合 20%、ブルームバーグ米国ハイイー ルド社債トータルリターンインデックス(米ドル建て為替ヘッジなし)に 3%、S&P/LSTA レバレッジド・ローン・トータルリターンインデックス 5%)、オルタナティブ資産への配分を 24%(FTSE REIT 指数 9%、ヘッジファンドHFRI 指数 4%、S&P プライベート・エクイティ指数 10%、ブルームバーグ商品指数 1%)として、四半期ごとにトータルリターンのリバランスを行うことを仮定したもの。金をポートフォリオに組み入れた際には、全資産を比例して圧縮した。リスク調整後リターンは、年率リターン/年率変動幅として計算。 本レポートの最後に記載の、著作権およびその他の権利を参照。 出所:ブルームバーグ、ICE ベンチマーク・アドミニストレーション、ワールド ゴールド カウンシル

出所: ブルームバーグ, ICEベンチマーク・アドミニストレーション, ワールド ゴールド カウンシル; 免責事項

* 2001 年 12 月 31 日~ 2021 年 12 月 31 日の米ドルのパフォーマンスに基づく。架空の平均的なポートフォリオは、JP モルガン・アセット・マネジメント社とコーリション・グリニッジ社(旧グリニッジ・アソシエイツ社)の市場データ、およびブラックロック社のデータを用いて作成。株式への配分を 48%(ラッセル 3000トータルリターン指数 30%、MSCI ACWI(米国以外)18%)、債券への配分を 28%(バークレイズ米国総合 20%、ブルームバーグ米国ハイイールド社債トータルリターンインデックス(米ドル建て為替ヘッジなし)に 3%、 S&P/LSTA レバレッジド・ローン・トータルリターンインデックス 5%)、オルタナティブ資産への配分を 24%(FTSE REIT 指数 9%、ヘッジファンド HFRI 指数 4%、S&P プライベート・エクイティ指数 10%、ブルームバーグ商品指数 1%)として、四半期ごとにトータルリターンのリバランスを行うことを仮定したもの。金をポートフォリオに組み入れた際には、全資産を比例して圧縮した。リスク調整後リターンは、年率リターン/年率変動幅として計算。本レポートの最後に記載の、著作権およびその他の権利を参照。

表 1:金はポートフォリオの変動幅や最大ドローダウンを抑制し、リスク調整後リターンを上昇させてきた

架空の平均的な米国のポートフォリオと、同等のポートフォリオに過去 1 年、5 年、10 年、20 年にわたり金を 5%組み入れた場合との、米ドル建てリターンに基づく比較 *

  20 年 10 年 5 年 2 年
  金を含まない 金が 5% 金を含まない 金が 5% 金を含まない 金が 5% 金を含まない 金が 5%
年率リターン 8.29% 8.46% 10.54% 10.16% 11.96% 11.92% 14.56% 14.43%
年率変動幅 11.57% 11.12% 9.77% 9.42% 11.47% 10.96% 15.58% 14.88%
リスク調整後のリターン 0.72 0.76 1.08 1.08 1.04 1.09 0.93 0.97
最大ドローダウン -45.5% -43.1% -17.6% -16.6% -17.6% -16.6% -17.6% -16.6%

*2021 年 12 月 31 日現在。架空の平均的なポートフォリオは、JP モルガン・アセット・マネジメント社とコーリション・グリニッジ社(旧グリニッジ・アソシエイツ社)の市場データ、およびブラックロック社のデータを用いて作成(図 13 の説明に基づく)。リスク調整後リターンは、年率リターン/年率変動

幅として計算。最大減少幅は、総価値が直前のピークに達した時点以降の、当該ポートフォリオの最大の減少幅として計算。出所:ブルームバーグ、ICE ベンチマーク・アドミニストレーション、ワールド ゴールド カウンシル

 

図 14:金は幅広いリスクレベルで、ポートフォリオのリスク調整後リターンを大幅に向上させる可能性があり、同等のリターンが期待される金を含まないポートフォリオと比較すると特に顕著

金は幅広いリスクレベルで、ポートフォリオのリスク調整後リターンを大幅に向上させる可能性があり、 同等のリターンが期待される金を含まないポートフォリオと比較すると特に顕著

架空の米国の平均的なポートフォリオにおける効率的フロンティア

金は幅広いリスクレベルで、ポートフォリオのリスク調整後リターンを大幅に向上させる可能性があり、 同等のリターンが期待される金を含まないポートフォリオと比較すると特に顕著
(a)架空の米国の平均的なポートフォリオにおける効率的フロンティア
* 2021年12 月 31 日現在。「リスク調整後の最高リターン」は、所定のポートフォリオの中で最も高いリスク調整後のリターンを表す。「等価 %リターン」は、現在の米国年金基金と同じ期待リターンを持つポートフォリオの予想変動幅を表す。「現在の平均ポートフォリオ」は、金のエクスポージャーがない状態でリサンプルされた現在の組入比率。図 14b の黄土色の縦棒は、各ポートフォリオにおける最適な金比率を、縦棒内の黒丸はリスク調整後のリターンが最も高い金比率を示す。赤丸は、金の期待リターンを低く設定した環境における金の重要性を強調することを目的とした、金の組入比率を 4.5%に半減させた場合のリスク調整後の最高リターンを示している。ポートフォリオ構成の詳細は、9 ページの図 13 を参照。分析には、ニュー・フロンティア・アドバイザーズのリサンプリング・効率最適化法を用いた。詳細は、2008 年オックスフォード大学出版局発行 Efficient Asset Management: A Practical Guide to Stock Portfolio Optimization and AssetAllocation を参照。 本レポートの最後に記載の、著作権およびその他の権利を参照。 出所:World Gold Council

出所: ワールド ゴールド カウンシル; 免責事項

* 2021 年 12 月 31 日現在。「リスク調整後の最高リターン」は、所定のポートフォリオの中で最も高いリスク調整後のリターンを表す。「等価 % リターン」は、現在の米国年金基金と同じ期待リターンを持つポートフォリオの予想変動幅を表す。「現在の平均ポートフォリオ」は、金のエクスポージャーがない状態でリサンプルされた現在の組入比率。図 14b の黄土色の縦棒は、各ポートフォリオにおける最適な金比率を、縦棒内の黒丸はリスク調整後のリターンが最も高い金比率を示す。赤丸は、金の期待リターンを低く設定した環境における金の重要性を強調することを目的とした、金の組入比率を 4.5%に半減させた場合のリスク調整後の最高リターンを示している。ポートフォリオ構成の詳細は、9 ページの図 13 を参照。分析には、ニュー・フロンティア・アドバイザーズのリサンプリング・効率最適化法を用いた。詳細は、2008 年オックスフォード大学出版局発行 Efficient Asset Management: A Practical Guide to Stock Portfolio Optimization and Asset Allocation を参照。本レポートの最後に記載の、著作権およびその他の権利を参照。

 

金は幅広いリスクレベルで、ポートフォリオのリスク調整後リターンを大幅に向上させる可能性があり、 同等のリターンが期待される金を含まないポートフォリオと比較すると特に顕著

架空の各ポートフォリオにおける金の配分比率と、リスク調整後リターンを最大化しうる金の配分比率 *

金は幅広いリスクレベルで、ポートフォリオのリスク調整後リターンを大幅に向上させる可能性があり、 同等のリターンが期待される金を含まないポートフォリオと比較すると特に顕著
(b)架空の各ポートフォリオにおける金の配分比率と、リスク調整後リターンを最大化しうる金の配分比率 *
* 2021年12 月 31 日現在。「リスク調整後の最高リターン」は、所定のポートフォリオの中で最も高いリスク調整後のリターンを表す。「等価 %リターン」は、現在の米国年金基金と同じ期待リターンを持つポートフォリオの予想変動幅を表す。「現在の平均ポートフォリオ」は、金のエクスポージャーがない状態でリサンプルされた現在の組入比率。図 14b の黄土色の縦棒は、各ポートフォリオにおける最適な金比率を、縦棒内の黒丸はリスク調整後のリターンが最も高い金比率を示す。赤丸は、金の期待リターンを低く設定した環境における金の重要性を強調することを目的とした、金の組入比率を 4.5%に半減させた場合のリスク調整後の最高リターンを示している。ポートフォリオ構成の詳細は、9 ページの図 13 を参照。分析には、ニュー・フロンティア・アドバイザーズのリサンプリング・効率最適化法を用いた。詳細は、2008 年オックスフォード大学出版局発行 Efficient Asset Management: A Practical Guide to Stock Portfolio Optimization and AssetAllocation を参照。 本レポートの最後に記載の、著作権およびその他の権利を参照。 出所:World Gold Council

出所: ワールド ゴールド カウンシル; 免責事項

* 2021 年 12 月 31 日現在。「リスク調整後の最高リターン」は、所定のポートフォリオの中で最も高いリスク調整後のリターンを表す。「等価 % リターン」は、現在の米国年金基金と同じ期待リターンを持つポートフォリオの予想変動幅を表す。「現在の平均ポートフォリオ」は、金のエクスポージャーがない状態でリサンプルされた現在の組入比率。図 14b の黄土色の縦棒は、各ポートフォリオにおける最適な金比率を、縦棒内の黒丸はリスク調整後のリターンが最も高い金比率を示す。赤丸は、金の期待リターンを低く設定した環境における金の重要性を強調することを目的とした、金の組入比率を 4.5%に半減させた場合のリスク調整後の最高リターンを示している。ポートフォリオ構成の詳細は、9 ページの図 13 を参照。分析には、ニュー・フロンティア・アドバイザーズのリサンプリング・効率最適化法を用いた。詳細は、2008 年オックスフォード大学出版局発行 Efficient Asset Management: A Practical Guide to Stock Portfolio Optimization and Asset Allocation を参照。

本レポートの最後に記載の、著作権およびその他の権利を参照。

結論

過去 20 年間で、東洋の富の増加や、機関投資家のポートフォリオにおける金の役割に対する世界的な評価の高まりを反映して、金に対する認識は大きく変わりました。

金には、希少で流動性が高く、他資産と相関が無いという独自の特性があり、このことが、金が長期的に分散投資の手段になりうることを示しています。投資商品でもあり贅沢品でもあるという立ち位置を生かして、金は過去 50 年にわたって 11%の平均リターンを実現してきました。これは株式に匹敵し、債券や商品を上回ります 2526

金には伝統的に、安全な避難先の資産としての役割があり、これは高リスクの時期に真価を発揮します。しかし金には投資資産と消費財という二面的な魅力があるため、好況時にもプラスのリターンを生み出すことができます。現在の政治/経済的な不確実性、低金利、株式市場や債券市場をめぐる経済的な懸念を反映し、この力学は今後も継続するでしょう。

ワールド  ゴールド  カウンシルの分析の結果は、架空の平均的なポートフォリオの 4 ~ 15%(地域や構成により異なります)の金を追加することによって、パフォーマンスが目に見えて向上
し、リスク調整後リターンが持続的かつ長期的に上昇する可能性があることを示唆しています 27

フォーカス 1: 平均的な商品(コモディティ)資産とは異なる金

金は通常、商品指数を構成する品目、ETF としての保有、商品取引所における先物取引という形で、商品に分類される資産と見なされます。金と商品にはいくつかの共通点がありますが、重要な違いもあります。

  • 金は伝統的に、安全な避難先となる資産と見なされてきた
  • 金は投資資産であると同時に消費財でもある
  • 金の供給はバランスが取れていて、厚みと幅広さがある
  • 他の伝統的商品の大半とは異なり、時間が経っても価値が下がらない

こうした特徴があるため、金は商品構成の中で一線を画します。そしてワールド ゴールド カウンシルの分析は、金を明確に組み入れることで、商品へのパッシブな投資ポートフォリオのパフォーマンスを強化できることを示唆しています 25

近年、2 つの主要商品指数が、金のウェイトを引き上げてきています。282021 年には、S&P  GSCI における個別商品の中で金のウェイトの上昇率が最大となりました。金は 2022 年も、S&P  GSCI の個別商品において最大のウェイトを維持するとみられています。また、ブルームバーグ商品指数では 2年連続で金のウェイトが過去最大(15%)になる見込みで、これは個別商品の中での最高値です。とはいえワールド  ゴールド  カウンシルの分析は、これらの商品指数の金のアロケーションが、依然として最適ウェイトを下回っていることを示唆します 29

 

図 15:金のパフォーマンスは、ブロードインデックスと、それを構成するコモディティ要素のパフォーマンスを上回る

金のパフォーマンスは、ブロードインデックスと、それを構成するコモディティ要素のパフォーマンスを上回る

コモディティインデックスと個々の主要コモディティの、過去 20 年の年間平均リターン *

金のパフォーマンスは、ブロードインデックスと、それを構成するコモディティ要素のパフォーマンスを上回る
コモディティインデックスと個々の主要コモディティの、過去 20 年の年間平均リターン *
* 2001年12 月 31 日~ 2021年12 月 31 日の平均年率リターン。以下を基にトータルリターンインデックスを米ドルで算出:S&P GSCI 農産物クローズ指数、ブルームバーグ商品指数、S&P GSCI 銅オフィシャルクローズ指数、S&P GSCI 穀物オフィシャルクローズ指数、LBMA 銀価格、S&P GSCI 畜産物、S&PGSCI プラチナ指数、S&P GSCIトータルリターン CME、S&P 石油指数、LBMA 金価格午後決め値。 出所:ブルームバーグ、ワールド ゴールド カウンシル

出所: ブルームバーグ, ワールド ゴールド カウンシル; 免責事項

* 2001 年 12 月 31 日~ 2021 年 12 月 31 日の平均年率リターン。以下を基にトータルリターンインデックスを米ドルで算出:S&P GSCI 農産物クローズ指数、ブルームバーグ商品指数、S&P GSCI 銅オフィシャルクローズ指数、S&P GSCI 穀物オフィシャルクローズ指数、LBMA 銀価格、S&P GSCI 畜産物、S&P GSCI プラチナ指数、S&P GSCIトータルリターン CME、S&P 石油指数、LBMA 金価格午後決め値。

フォーカス 2: ESG 投資としての金

金は、責任ある方法で産出され、環境、社会、ガバナンス(ESG)に関する高い基準に準拠したサプライチェーンにより供給されるものと認識されるべきであると、ワールド ゴールド カウンシルは考えています。また金には、投資家に降りかかる気候変動に関連するリスクを軽減する役割を果たせるポテンシャルがあります。

金の採掘は、定義上は採取産業の一つですが、責任感のある産金会社は、環境や社会に対するリスクを軽減し、操業する国やコミュニティに大いに貢献しています。その取り組みには、賃金や税金の支払い、地域の経済発展の支援、インフラの改善、医療や学校教育へのアクセスの改善など多岐にわたります。ワールド ゴールド カウンシルが最近実施した、金の採掘によ る社会および経済への貢献の測定でも示されているように、こうした支出のほとんどが操業する国やコミュニティの地域経済に留まっています。また、業界は国連の持続可能な開発目標の推進貢献にもコミットしています。

ワールド  ゴールド  カウンシルのメンバーは、業界のリーダーとして、2019 年にワールド ゴールド カウンシルが発表した責任ある金鉱採掘原則(RGMP)の順守にコミットしています。この原則は、ESG の主な産金関連事項をすべて網羅する、責任ある金鉱採掘がどのようなものかに関する明確な期待値を設定するものです。これらの原則の順守を示すためには、報告書を公開し、独立専門家の認証を受ける必要があります。

それに加えてワールド ゴールド カウンシルは、世界経済の脱炭素化に貢献し、投資ポートフォリオの中で環境リスクを軽減する資産として、金が重要な役割を果たせるものと確信しています。

世界レベルでは、金全体のカーボンフットプリントは比較的小さいものの、少なくはありません(世界排出量の 0.4% 未満)。しかしながら、金のサプライチェーンにおいて、温室効果ガスの総排出量を削減できるチャンスは十分にあります。他の多くの商品やセクターと違って、こうしたチャンスが明確であり集中しているということが、ある研究では示されています。金に関連する温室効果ガスのほとんどが生産過程、とりわけ鉱山での電力の生産と消費によるもので、こうした電力関連の排出を抑える取り組みはすでに大幅に進められています。

金には下流での排出が生じず、こうしたことは金の投資家には重要な意味があります。金の保有により、ポートフォリオの価値における炭素強度を削減できるためです。さらに、金のバリューチェーンの将来に向けた脱炭素化に前向きな見通しが立つことにより、予想される炭素プロファイル、「目標温度」や、ポートフォリオ保有における気候変動に関する目標への準拠関するメリットも期待できるでしょう。

ワールド ゴールド カウンシルの分析は、各種の長期的気候シナリオにおいて、とりわけ気候変動の影響により市場の不安定性が発生または悪化した場合や、ネットゼロ経済への破壊的な転換が起こった場合において、金が多くの主流資産クラスよりも優れたパフォーマンスを示す可能性を示唆しています。それに加えて、金の価値は炭素価格の上昇による悪影響を受ける可能性は低いため、脱炭素経済への転換を促進するうえで必要なものとしてこれから講じられうる政策的対応から投資家を守る緩衝材としての機能もある程度持ち合わせています。

脚注

101971 年 1 月~ 2021 年 12 月。

11金本位制では金が米ドルを担保し、各国通貨の交換レートは
ブレトン・ウッズ体制で決定された。1971 年 8 月、ニクソン政権が米ドルと金の自由交換の停止を発表したことを機に金本位制が崩壊し、それに続いてブレトン・ウッズ体制が崩壊した。

12その他のリターン指標とパフォーマンスは 17 ページの録 II を参照

1315 ページの図 18a を参照。

14IMF の測定による 1971 年 12 月~ 2021 年 12 月の米国と世界の CPI の平均年変化率に基づく(米国は 3.94%、世界は 10.4%)。

15米国 CPI が 4%を超えた 15 の月における金の平均リターンは 21%であったが、米国CPI が 5%を超えた 10 の月において、金は平均 27%増加した。

16Oxford Economics, The impact of inflation and deflation on the case for gold, July 2011.

17前掲脚注11。

182001 年 12 月 31 日~ 2021 年 12 月 31 日。Goldhub.com の Demand and Supply のセクションを参照。

19詳しくは以下を参照 : The impact of monetary policy on gold and It may be time to replace bonds with gold

202007 年 12 月 1 日~ 2009 年 2 月 27 日の LBMA 金価格午後決め値に基づく。

212018 年 10 月 1 日~ 2018 年 12 月 27 日と、2020 年 1 月 31 日~2020 年 3 月 3 日の LBMA 金価格午後決め値に基づく。

22リサンプリング・効率最適化法は、従来通りの平均・分散モデルによる最適化に代わる強固な分析法として高く評価されている。

23Gold as a tactical inflation hedge and long-term strategic asset, July 2009.

24Enhancing the performance of alternatives with gold, February 2018

251971 年 1 月~ 2021 年 12 月の米ドル建て年間平均リターン。

2617 ページの図 22 を参照。

272 ページの図 1 を参照。

28参照: Gold: the most effective commodity investment – 2021 edition, August 2021.and Gold: metal by design, currency by nature, Gold Investor, Volume 6, June 2014.

29金のウェイトの上昇について、詳しくは Major commodity indices will increase gold weightings for a second year in a row を参照

著作権およびその他の権利について [+]著作権およびその他の権利について [-]