付録Ⅰ: 金需給の構成とトレンド

20 April, 2022

大規模だが希少性のある市場

金市場には、投資家にとって魅力的な 2 つの特徴があります。金の希少性は、長期的な魅力を支えます。しかし金市場には、中央銀行を含む多種多様な機関投資家が妥当性を見出せるだけの規模もあります。

現在採掘済みの金は約 20 万 5,238 トンで、その価値は 11 兆 9 千億米ドルを超えます(図 1630

鉱山生産は過去 10 年で、毎年 3,400 トンの金を追加してきました。これは採掘済みの金が年率 2%のペースで増加したことに相当します 31。また、鉱山生産量は各地域に広く分散しています(図 17)。

採掘済みの金現物 32 の用途別内訳は以下のとおりです。

  • 宝飾品:9 万 4,464 トン(5 兆 5 千億米ドル)46%
  • 他のセクター:3 万 4,592 トン(2 兆米ドル)17%
  • 金地金・金貨:4 万 1,885 トン(2 兆 4 千億米ドル)20%
  • ETF および類似商品:3,570 トン(2 千億米ドル)2%
  • その他および不明:3 万 726 トン(1 兆 8 千億米ドル)15%

金の金融市場は、金地金、金貨、金を裏付けとする ETF、中央銀行の金準備で構成されます。金の金融セグメントの規模は、主な金融市場に引けを取りません(図 16)。

 

図 16:金の金融市場の規模は多くのグローバルな資産よりも大きく、判明しているゴールドデリバティブの建玉残高が小さく見える *

(a)採掘済みの金とゴールドデリバティブの価値

金の金融市場の規模は多くのグローバルな資産よりも大きく、判明しているゴールドデリバティブの建玉残高が小さく見える *

採掘済みの金とゴールドデリバティブの価値

金の金融市場の規模は多くのグローバルな資産よりも大きく、判明しているゴールドデリバティブの建玉残高が小さく見える *
(a)採掘済みの金とゴールドデリバティブの価値
* 2021年12 月 31 日現在。 ** ニューヨーク商品取引所、東京商品取引所、相対取引の建玉残高を示す。 *** 2021 年の推定採掘済み量と、オリンピック公式競技用プールの寸法(長さ 164ft、幅 82ft、深さ 9ft)に基づく。「他の加工」(13%)、「不明」(2%)を含む。 Goldhub.com の以下のセクションを参照 : Financial market size。 出所 : 国際決済銀行、ブルームバーグ

出所: ブルームバーグ, 国際決済銀行; 免責事項

* 2021 年 12 月 31 日現在。

** ニューヨーク商品取引所、東京商品取引所、相対取引の建玉残高を示す。

*** 2021 年の推定採掘済み量と、オリンピック公式競技用プールの寸法(長さ 164ft、幅 82ft、深さ 9ft)に基づく。「他の加工」(13%)、「不明」(2%)を含む。

Goldhub.com の以下のセクションを参照 : Financial market size。

(b)金の供給量は、オリンピック公式競技用プールの3杯弱に相当***

  1. 宝飾品 ~94,464t, 46%
  2. 金地金・金貨(金ETF を含む) ~45,425t, 22%
  3. 中央銀行 ~34,592t, 17%
  4. その他地域 ~30,726t, 15%
  5. 確認済みの埋蔵分 ~54,000t

出所 : 国際決済銀行、ブルームバーグ免責事項

* 2021 年 12 月 31 日現在。

** ニューヨーク商品取引所、東京商品取引所、相対取引の建玉残高を示す。

*** 2021 年の推定採掘済み量と、オリンピック公式競技用プールの寸法(長さ 164ft、幅 82ft、深さ 9ft)に基づく。「他の加工」(13%)、「不明」(2%)を含む。

Goldhub.com の以下のセクションを参照 : Financial market size.

 

Chart 17: Fewer supply shocks reduce gold’s volatility

Fewer supply shocks reduce gold’s volatility

Gold supply is a mix of mined (72%) and recycled gold (28%); mine production is spread across continents, contributing to gold’s low volatility relative to commodities

Fewer supply shocks reduce gold’s volatility
Gold supply is a mix of mined (72%) and recycled gold (28%); mine production is spread across continents, contributing to gold’s low volatility relative to commodities
*Computed using average annual supply from 2010 to 2020. Regional breakdown excludes central bank demand due to data availability. Source: On Goldhub.com: Gold mine production

出所: ワールド ゴールド カウンシル; 免責事項

*Computed using average annual supply from 2010 to 2020. Regional breakdown excludes central bank demand due to data availability.

需要の多様性が金の相関性の低さを支える

 

図18(a):金は世界中で、複数の目的で―すなわち贅沢品、高級エレクトロニクス製品の部品、投資の安全な避難先、 ポートフォリオの分散手段として―購入されている*

金は世界中で、複数の目的で―すなわち贅沢品、高級エレクトロニクス製品の部品、投資の安全な避難先、ポートフォリオの分散手段として―購入されている*

金は世界中で、複数の目的で―すなわち贅沢品、高級エレクトロニクス製品の部品、投資の安全な避難先、ポートフォリオの分散手段として―購入されている*
*2012 ~ 2021 年の平均年間需要を用いて計算。データ入手の問題のため、地域の内訳から中央銀行の需要を除外する。金地金・金貨、ETF、従来正味ベースで報告されてきた中央銀行の需要に加え、宝飾品とリサイクルのテクノロジーネットの金需要を含む。OTC 需要は除く。丸め処理のため、数値の合計が 100% にならない場合がある。 ** 宝飾品とテクノロジーの正味需要は、年間リサイクル量の 90% が宝飾品、10% がテクノロジーから発生するものと仮定して計算。 出所:ブルームバーグ、企業発表資料、ICE ベンチマーク・アドミニストレーション、メタルズ・フォーカス、リフィニティブ GFMS、ワールド ゴールド カウンシル
 

図18(b):金需要は地域によってさまざまだが、72%が新興国で発生し、中国とインドが全需要の50%を占める*

金需要は地域によってさまざまだが、72%が新興国で発生し、中国とインドが全需要の50%を占める*

金需要は地域によってさまざまだが、72%が新興国で発生し、中国とインドが全需要の50%を占める*
*2012 ~ 2021 年の平均年間需要を用いて計算。データ入手の問題のため、地域の内訳から中央銀行の需要を除外する。金地金・金貨、ETF、従来正味ベースで報告されてきた中央銀行の需要に加え、宝飾品とリサイクルのテクノロジーネットの金需要を含む。OTC 需要は除く。丸め処理のため、数値の合計が 100% にならない場合がある。 ** 宝飾品とテクノロジーの正味需要は、年間リサイクル量の 90% が宝飾品、10% がテクノロジーから発生するものと仮定して計算。 出所:ブルームバーグ、企業発表資料、ICE ベンチマーク・アドミニストレーション、メタルズ・フォーカス、リフィニティブ GFMS、ワールド ゴールド カウンシル

*2012~ 2021 年の平均年間需要を用いて計算。データ入手の問題のため、地域の内訳から中央銀行の需要を除外する。
金地金・金貨、ETF、従来正味ベースで報告されてきた中央銀行の需要に加え、宝飾品とリサイクルのテクノロジーネットの金需要を含む。
OTC 需要は除く。丸め処理のため、数値の合計が 100%にならない場合がある。
** 宝飾品とテクノロジーの正味需要は、年間リサイクル量の 90%が宝飾品、10%がテクノロジーから発生するものと仮定して計算。

出所:ブルームバーグ、企業発表資料、ICE ベンチマーク・アドミニストレーション、メタルズ・フォーカス、リフィニティブ GFMS、ワールド ゴールド カウンシル

金需要の構成を変える主なトレンド

消費者需要が、中国とインドの革命的な経済成長によって加速しています。1990 年代初めの中国とインドの金需要は、世界全体の約 25%でした。今では富の拡大によって、両国を合わせたシェアは 54% にまで増加しています(図 1933。富の拡大は、長期的な金需要の最も重要なドライバーの 1 つであり、宝飾品の消費、テクノロジー投資、金地金・金貨の取得を促します 34

 

図 19:インドと中国は、20年もかからずに、金市場におけるシェアを 2 倍に拡大

インドと中国は、20 年もかからずに、金市場におけるシェアを 2 倍に拡大

新興国市場の経済発展が消費者需要を生み出し、インドと中国で市場シェアを拡大 *

インドと中国は、20 年もかからずに、金市場におけるシェアを 2 倍に拡大
新興国市場の経済発展が消費者需要を生み出し、インドと中国で市場シェアを拡大 *
* 2021年12 月 31 日現在。消費者需要は、宝飾品と金地金・金貨の需要の合計と定義。 Goldhub.com の以下のセクションを参照:ゴールド・デマンド・トレンド 出所:メタルズ・フォーカス、リフィニティブ GFMS、ワールド ゴールド カウンシル

出所: メタルズ・フォーカス, リフィニティブGFMS, ワールド ゴールド カウンシル; 免責事項

* 2021 年 12 月 31 日現在。消費者需要は、宝飾品と金地金・金貨の需要の合計と定義。Goldhub.com の以下のセクションを参照:ゴールド・デマンド・トレンド

機関投資家および個人投資家が、金を裏付けとする ETF および類似商品と結びついたことによって、金需要および金への投資に重要なインパクトを与えました。2003 年に初めて登場した金ETF は、2021 年末時点で約 3,570 トン(2,090 億米ドル相当)の金を集めています(図 2035。その伸びが特に顕著なのが欧州です。欧州の市場シェアは北米の水準に近づき、世界的に受容されたことが分かります。さらに、中国とインドでの金 ETF が投資需要全体に占める比率も上昇しました(Global gold ETFs: A popular gateway to the gold market を参照)。

 

図 20:金を裏付けとする ETF が、世界中で新たな投資家と金を結びつける

金を裏付けとする ETF が、世界中で新たな投資家と金を結びつける

年間 ETF 金需要と累積保有量 *

金を裏付けとする ETF が、世界中で新たな投資家と金を結びつける
年間 ETF 金需要と累積保有量 *
*2021年12 月 31 日現在。金を裏付けとする ETF および類似商品を含む。 Goldhub.com の以下のセクションを参照 : Global gold-backed ETFholdings and flows 出所:ブルームバーグ、企業発表資料、ワールド ゴールド カウンシル

出所: ブルームバーグ, ワールド ゴールド カウンシル; 免責事項

*2021 年 12 月 31 日現在。金を裏付けとする ETF および類似商品を含む。Goldhub.com の以下のセクションを参照 : Global gold-backed ETF holdings and flows

中央銀行の需要はここ数年で大きく変化しました。準備資産の管理者は2010 年以降、金を買い越してきました。さらに最近では、数十年ぶりの規模で金を購入し、それを外貨準備の分散に活用しています(図 21)。

 

Chart 21: Central banks have been a steady net source of demand since 2010, led by emerging markets

Central banks have been a steady net source of demand since 2010, led by emerging markets

Net global central bank gold demand*

Central banks have been a steady net source of demand since 2010, led by emerging markets
Net global central bank gold demand*
*2021年12月31日現在。 Goldhub.comの以下のセクションを参照:Monthly central bankstatistics 出所:メタルズ・フォーカス、リフィニティブGFMS、ワールド ゴールド カウンシル

出所: メタルズ・フォーカス, リフィニティブGFMS, ワールド ゴールド カウンシル; 免責事項

*2021年12月31日現在。

Goldhub.comの以下のセクションを参照:Monthly central bank statistics

脚注

302021 年 12 月 31 日の LBMA 金価格および、メタルズ・フォーカス、リフィニティブ GFMS、ワールド ゴールド カウンシルが推定する 2021 年の金の採掘済み量に基づく。

31メタルズ・フォーカスとリフィニティブ GFMS が推定する 10 年間の平均鉱山生産量の、2020 年 12 月 31 日時点の採掘済み量に対する比率。

32前掲脚注 31。

332021 年 12 月 31 日現在。

34前掲。

352021 年 12 月 31 日現在。

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