- 2023 年は投資需要が伸びる見込みです。2022 年は金ETF およびOTC の需要が低調でしたが、好調だった金地金・金貨 のリテール需要からバトンを受け取りそうです。欧米市場のリ テール投資需要は、インフレ懸念が弱まるにつれて堅調さを維 持しつつも減少する見通しですが、アジアでは高成長率を受け て力強さを見せるでしょう。とはいえ、景気後退リスクや地政 学的リスクが高まっていることから、金への興味は続く見通し であり、年が進むにつれて有利な兆候が表れてきています。
- 中央銀行の購入は2022 年の水準には及ばないでしょう。合 計準備高が減れば、既存の金準備を増やす余地が限られるかも しれません。しかし一部の中央銀行で報告が遅れていることか ら、予測に大きな不確実性(主にプラスの変動)があることを 織り込む必要があります。
- ワールド ゴールド カウンシルは、2022 年に底堅さを見せた宝飾品需要がさらに改善すると予測します。ただし、中国には強力なベース効果が生じるものの、世界の景気後退が深刻化して他の国で需要が落ち込んだ場合は、この効果が損なわれる可能性があるため注意が必要です。中国経済が再開し、宝飾品分野で抑圧された需要や経済成長に伴う需要が存在することから、歓迎するべき勢いが生まれるでしょう。ただし新型コロナウイルス感染症の再流行が逆風になる可能性はあります。インドの 2023 年の需要の出足は鈍く、現地金価格の高値が続けば、これが継続するかもしれません。
- 総供給量については、既存オペレーションの拡大により生産量が増加することから、2023 年も小幅に増加する見通しです。リサイクルは減少が見込まれますが、欧米市場のインフレ率の低下や景気後退に伴う投げ売りの兆候が見られていることから、上振れリスクも排除はできません。
今後の見通し
31 January, 2023
取引所:2023 年は、ETF および OTC が金地金・金貨の需要の バトンを受け取っています。
ワールド ゴールド カウンシルは 2022 年 12 月に 2023 Gold Outlook を発行しました。
2022 年第 4 四半期――および入手可能な場合は 2023 年の年初来――のデータは、1引き続き同レポートの中央シナリオと一致しています。2023 年が金にとって良い 1 年になるというワールド ゴールド カウンシルの見解に変更はなく、米国と欧州の景気後退リスクの高まりを踏まえると、下振れリスクよりも上振れの可能性が勝るでしょう。
投資:2023年は上振れの可能性あり
2022 年に精彩を欠いた ETF と OTC 需要ですが、投資が成長する 1 年に向けて準備は整っているようです。
1 年のほとんどの期間で金利上昇と米ドル高という強烈な逆風に直面したにもかかわらず、金のパフォーマンスは安定しており、これが投資家の興味を再びかき立てました。投資家は想定される金利のピークをすでに設定しているため、金利の上昇はそれほど問題にならないでしょう。ワールド ゴールド カウンシルでは、それに加えて米ドル安の継続、景気後退リスクの拡大、債券と株式の相関性の強さの継続、高まった地政学的リスクが、2023年の金投資の戦術的な正当性を支えると考えます。
2023 年は引き続きインフレ率が低下する見込みです。しかしこのことは、機関投資需要よりも金地金・金貨のリテール投資にとっては逆風になると見ています。前回のゴールド・デマンド・トレンドで指摘したように、2022 年は、使用可能なインフレヘッジの代替手段が乏しいことが、アジアや中東の多くの国で強力な金需要を牽引しました。インフレ率が低下すれば、ある程度の需要の減速を予想しなければなりません。しかし金のリテール需要は粘着性を持つ傾向があるため、投資の巻き戻しが生じるとは予想していません。
加工需要:2023年の需要は、底堅くも低調だった2022年の恩恵を受ける
宝飾品需要は、中国経済の再開が主な原動力となって、底堅かった 2022 年の恩恵を受けるでしょう。景気回復、抑圧された需要、現地価格の安定化によって、2016 ~ 2018 年に匹敵する需要が生じるはずです。しかし、新型コロナウイルス感染症の収束後の反応が鈍い――欧米で見られたように、同様に抑圧されていた他の商品やサービスへの支出が金への支出を上回る――場合や、新型コロナウイルス感染症が再流行した場合はリスクが残ります。それに加えて、他の地域の景気減速がより深刻だった場合、期待される中国の需要の強さが一部で相殺される可能性があります。
一方、インドは第 4 四半期が弱く、2023 年のスタートも低調 だという話があることから、同国の宝飾品需要は予想される中国 の成長に及ばないでしょう。婚礼に適した吉日が多く(2022年の 55 日に対し 2023 年は 67 日)、カリフ作物の市場価格が比較的高いことはプラスになる 1 はずですが、現地金価格の高さや長引く農村部のインフレが、ある程度購入を妨げるかもしれません。
テクノロジー需要の見通しは、中国への制裁措置と消費者需要の低迷が引き続き同セクターの重しとなるため、2023 年も振るいません。これに加えて、景気後退リスクが欧州と米国で現実化しつつあることが、自由裁量支出の需要をさらに抑制するでしょう。とはいえ業界全体で在庫調整が続く見込みであり、このことが年末にかけて多少は需要を支えるかもしれません。
中央銀行:2022年に並ぶことは至難の業
中央銀行の需要予測は依然として困難です。その 1 つの理由は、この種の需要が政策主導で発生する場合があり、ワールド ゴールド カウンシルが他セクターの分析に使用する最も一般的な経済要因に反応するとは限らないからです。さらに、保有残高の報告は任意であり、往々にして遅れるため、サプライズが生じる可能性は大いにあるでしょう。しかし合計準備高の伸びが鈍化すれば、中央銀行によっては金準備を増やす余地が減るでしょう。従ってワールド ゴールド カウンシルは、2023 年の購入はより穏やかなものになると見ています。
供給:鉱山生産は2023年も順調に伸びる可能性
2023 年の米州全体の生産量は、北米の既存プロジェクトの拡大が牽引して前年を上回る見込みで、過去最高だった 2018 年を超える可能性もあります。
2022 年は主なリサイクル地域で現地金価格が比較的高値でしたが、そのような状況が示唆するであろうリサイクルの増加は見られませんでした。しかし金価格が比較的低かった年末の高騰前の数カ月は、価格に連動したリサイクルの抑制が発生しました。インフレ率の高さも、一部の人々が金を手放さない要因になったと思われます。2023 年はインフレ率の低下が予想されており、これが高い景気後退リスクと相まって、インフレ連動の売りと投げ売りの両方が徐々に増加する可能性が高まります。