中央銀行の需要は、2 年前に過去 10 年の最低値を記録した後、力強く回復しています。2022 年の同セクターの買い越しは合計 1,136 トンで、2 年連続で前年を上回りました。2022 年は中央銀行の金購入の当たり年となりました。13 年連続の買い越しとなっただけでなく、第 3 四半期と第 4 四半期の需要がともに 400 トンを上回ったため、年間需要は 1950 年までさかのぼるデータの中で 2 番目の記録となりました。
中央銀行の第 4 四半期の買い越しは合計 417 トンとなり、下半期の購入量は合計862トンに達しました。第3四半期と同じく、第 4 四半期のデータも、報告済みの購入量と、かなりの規模の未報告購入量の推計値を足し合わせたものです。9 未報告の活動に関する情報が入手できるようになった場合、これらの推計値が修正される可能性があります。
中央銀行の金購入は、2010 年に年間ベースの買い越しに転じて以来「流行」しています。ワールド ゴールド カウンシルが公開する中央銀行の金準備の年次調査の最新版は、中央銀行に金保有を決断させる主な 2 つの要因を強調します。それは危機時の金のパフォーマンスと、長期的な価値の保全手段としての役割です。地政学的な不確実性と激しいインフレに見舞われた 1 年に、中央銀行が速いペースで金準備を追加し続けることを選んだのは不思議ではありません。
そして 2010 年からの傾向がさらに続く形で、2022 年も新興国の中央銀行による金購入が、報告済みの需要の大部分を占めました。2
しかし大量の金が購入される一方で、2022 年には多少の売却も発生しました。売却量が最も大きかったのはカザフスタン国立銀行で、金保有量が 51 トン減って 352 トン(準備資産全体の 58%)となりました。カザフスタン国立銀行はブルームバーグで声明を発表し、2023 年のさらなる売却計画を明らかにしました。ただし同銀行は以前、金の売却は市場の状況に左右される可能性があるとも表明しています。ワールド ゴールド カウンシルが過去のレポートで指摘したように、国内で生産された金を定期的に購入する中央銀行が、購入と売却の間で揺れ動くことは珍しくありません。
ドイツは実施中のコイン鋳造計画の一環として 4 トンの売り越しを記録しました。また、スリランカ(3 トン)、ポーランド(2 トン)、フィリピン(2 トン)、モンゴル(2 トン)、ボスニア・ヘルツェゴビナ(1 トン)、カンボジア(1 トン)、ブータン(1 トン)が 1 トン以上の売却を行いました。
ロシア中央銀行(CBR)は、国際的制裁措置を課せられたことを受けて、国内生産者からの金購入を再開することを発表しました。しかし 1 月に金準備が 3 トン減少したのが最後で、それ以降のデータは報告されていません。ワールド ゴールド カウンシルでは引き続き展開を監視していきます。
今後の見通しとしては、中央銀行が金に対するポジティブな姿勢を維持し、2023 年も買い越しが続くことを疑う理由はほとんどありません。しかし 2022 年初めのワールド ゴールド カウンシルの予測でも明らかなように、どの程度の規模になるかを見極めることは困難です。とはいえ、2023 年の中央銀行の需要が 2022年の水準に達することは難しいという見方もできるでしょう。詳しくは今後の見通しのセクションをご覧ください。