今期、金の総供給量は前年同期比で 4%増加 しました。鉱山生産量は 2%増加して、上半 期の記録を更新しました。
- 今期の金の総供給量は 4%の増加で、これには鉱山生産量 とリサイクルの両方が貢献しました。
- 上半期の総供給量は前年同期比 1%増の 2,441 トンで、鉱 山生産量が 2%増加したことで、上半期としての過去最高 を記録しました。
- 今期、リサイクル金の量は前年同期比で 4%増加し、上半 期の総リサイクル量としては 2012 年以来の高水準に達し ました。
30 July, 2024
トン | 2023年第2四 半期 | 2024年第2四 半期 | 前年同期比% | |
供給合計 | 1,207.9 | 1,258.2 | 4 | |
鉱山生産 | 899.7 | 929.1 | 3 | |
正味生産者ヘッジ | -15.7 | -6.3 | - | |
リサイクル金 | 324.0 | 335.4 | 4 |
出所:メタルズ・フォーカス、ワールド ゴールド カウンシル
今期、⾦の総供給量は前年同期⽐で 4%増加しました。要因は、鉱⼭⽣産量が 929 トンと好調だったこと(2000 年までさかのぼれるワールド ゴールド カウンシルのデータシリーズ中で第 2 四半期としての過去最⾼)と、リサイクルが前年同期⽐ 4%増の 335 トンとなったことです。暫定推計では、産⾦会社のヘッジポジション正味残⾼についても、今期 6 トン減少したことが⽰されましたが、このゴールド・デマンド・トレンドの発⾏時期の関係から、産⾦会社のネットヘッジの推計値は、鉱⼭会社の⼤半が四半期レポートを発表した後に、⼤幅な修正が加えられる可能性があります。
初期データでは、今期の鉱⼭⽣産量は前年同期⽐で 3%増加して 929 トンになったことが⽰されており、これは 2000 年までさかのぼることが可能なワールド ゴールド カウンシルの四半期データシリーズ中で、第 2 四半期としては昨年の 900トンを上回る過去最⾼記録となりました。
第 1 四半期の⽣産量 859 トン(これも第 1 四半期としては過去最⾼)と合わせると、従来の記録である 2023 年上半期の⽣産量を 2%上回り、上半期鉱⼭⽣産量としての過去最⾼である 1,788 トンを記録しました。
ただし、鉱⼭会社が公表するデータおよび⼈⼒採掘や⼩規模採掘(ASGM)に関する追加データがやがて⼊⼿可能になれば、今期(および今年上半期)の鉱⼭⽣産量合計が修正される余地があります。そのようなデータ修正の例としては、ゴールド・デマンド・トレンド 2024 年第 1 四半期で報告した今年第 1 四半期の鉱⼭⽣産量に関する当初推計値の 893 トンが、今第 2 四半期のデータセットに付随してメタルズ・フォーカスから得た最新データを反映したために、859 トンに下⽅修正されたことがあります。これは、今年第 1 四半期の鉱⼭⽣産量が前年同期⽐でわずか 1%の増加であったことを意味します。ただし、第 1 四半期としての過去最⾼であったことに変わりはありません。
前四半期⽐で、⽣産は 8%増加しました。これは、第1四半期がロシアやその他の CIS 加盟国の極寒期に当たり、露天掘りや沖積鉱床採掘が縮⼩または停⽌される通常の季節変動要因による影響です。同じように南アフリカの⾦鉱業も、クリスマスと新年の⻑い夏季休暇のために減産になる傾向があります。
今期、4 ヵ国が鉱⼭⽣産量の顕著な増加を公表しました。
これとは対照的に、⼀部の国では鉱体の枯渇、産出グレードの低下の影響、さらにマリの場合には許可の取得が遅れたことが影響しました。
地域別に⾒た場合、インドネシアと中国の⽣産量が増加したことで、前年同期⽐が 8%増加したアジアの増加が最も顕著で、それに続くのが前年同期⽐ 5%増の南⽶です。オーストラリアの⽣産量が減少したため、オセアニアは前年同期⽐6%ダウンと地域別で最も低調な結果に終わりました。
⽣産量が増加している⼀⽅で、採掘コストは今年初めの段階で上昇を続けていました。ワールド ゴールド カウンシルがデータを持っている直近の四半期である 2024 年第 1 四半期に、総産出コスト(AISC)が前年同期⽐で 10%増となり、四半期として過去最⾼の 1,439 ⽶ドル/オンスに達しました。2020 年以降、産業コストの上昇は、産⾦会社の投⼊コストのあらゆる側⾯にかかるインフレ圧⼒によって引き起こされており、その中でも最も顕著なのが⼈件費、燃料費、電気料⾦です。
断⾔するのは時期尚早ですが、メタルズ・フォーカスのデータでは、今年の鉱⼭⽣産量は過去最⾼になり、2018 年に記録したこれまでの記録 3,658 トンを上回ることが⽰されています。
当初の推計では、今期の⾦鉱⼭業のネットヘッジポジションは、これまでよりゆっくりとしたペースで減少しました。第1 四半期の減少が(それまでの推計 5 トン減から)24 トンになったのを受けて、当初の推計では、第 2 四半期の減少は 6トンになると⾒込まれています。ヘッジポジションの減少の⼤半が、満期になるポジションへの引き渡しによって⽣じたものですが、それらのすべてが更新されたわけではありません。
産⾦会社のヘッジポジションネット残⾼の総計は、今年上半期に 31 トン減少したと推定されます。⽐較のために記すと、2023 年上半期には 23 トン、2022 年上半期には 27 トンの追加がありました。
今期末の時点で、産⾦会社のヘッジポジション正味残⾼の総計は約 210 トンと推定されており、これは過去 1 年間における最⼩値で、今世紀初めに記録された3,000 トン超の総量からは程遠い数値となっています。
今期、⾦のリサイクルは前年同期⽐ 4%増の 335 トンでした。これは 2012 年第 2 四半期以来、第 2 四半期としては最⼤の量でしたが、直前の第 1 四半期に⽐べると 4%の減少でした。
(すべての通貨で)⾦価格が過去最⾼を記録したことで、リサイクル供給量は前年同期⽐では若⼲増加しましたが、前四半期⽐ではマイナスになりました。⼀部の市場における⾦価格に対するリサイクルの反応を考えると、前四半期⽐の減少は⼀⾒驚くべきことのように思えるでしょう。世界全体の合計は、(この後取り上げる)インドのリサイクル供給量の⼤幅減によって減少しました。インドの⼤きな落ち込みがなければ、世界全体のリサイクル量は前年同期⽐で 9%増、前四半
期⽐は実質的に横ばいになったものと思われます。
リサイクル供給の増加に最も⼤きく貢献したのは欧州で、過去数四半期にわたって⽐較的当たり障りのない⽔準であった量が、今期は⼤きな動きを⾒せました。その引き⾦となったのは、4 ⽉初めに 70 ユーロ/グラムを超えたユーロ建て⾦価格に関連した要因であると⾒られています。多くのメディアがこのことを⼤々的に取り上げ、⼀部の市場では消費者の投げ売りを⽰す証拠が乏しいこともあって、宝飾品の売り戻しの波が引き起こされました。伝えられたところでは、6 ⽉に⾦価格が安定したことで、欧州におけるリサイクルの流れが減速したものの、現地⾦価格が⼼理的に重要なレベルを再び超えた場合には流れが⼀気に加速することが考えられます。
そうした欧州とは対照的に、北⽶のリサイクルは増加ペースが落ちました。唯⼀カナダがリサイクル量の⼤幅増加を記録しましたが、それも⾦価格が「重要な」レベル(この場合は3,000 カナダドル/オンスで、同じくメディアに⼤きく取り上げられました)を超えたことに関係している可能性があります。⽶国経済が他の⼤半の国々よりも好調であるため、リサイクル量を⼤幅に増加させる要因は少なくなっています。
トルコや中東で⾦のリサイクルが増加している理由は、主に通貨に関連した要因です。エジプトでは、待望の IMF との合意が成⽴したことで、エジプト・ポンドが急落し、それ以降はそれまでよりも低い⽔準で安定しています。その後のリサイクル供給の増加は、⾦保有者がこの動きを予期していたことを⽰しており、現地⾦価格が⾼騰したことで、⾦保有者は⾼価格を利⽤して、古い宝飾品を売却しました。イラン通貨の安定性は、IMF との合意に起因するものではありませんが、⾦価格の上昇に対しては同様の反応を⽰しました。トルコでは、⻑く続いたトルコ・リラ安の後、リラが⽐較的安定していることがリサイクルの流れを増加させる契機となった
ようです。
価格の⾼騰と消費者マインドの冷え込みにより、中国ではリサイクル供給量が増え、さらに宝飾品店の廃業とそれに伴う在庫処分が供給量を⼀段と増加させました。これとは対照的に、中国以外の東アジア地域では、リサイクル可能な在庫が枯渇したことと、⾦価格のさらなる上昇への期待とによって、リサイクル供給量が(前年同期⽐と前四半期⽐の両⽅で)減少しました。
最後に、南アジア地域でのリサイクル量の⼤幅な落ち込みは、もっぱらインドの動きによって引き起こされたものです。同地域の他の国々では、ほぼグローバルトレンドに沿った動きを⾒せていました。インドのリサイクル量が少なかったことは、⾦宝飾品を担保とする貸付と、古い⾦宝飾品と新しい⾦宝飾品との交換がともに急増したことを反映しています。ワールド ゴールド カウンシルのデータ⼿法において、「⾦と⾦との交換」を、リサイクル供給量と⾦宝飾品消費量から除外しています。
こ⽜たものを合計に加えた場合、リサイクル⾦の量は 5%増加することになります。⾦と⾦との交換取引の規模が⼤きく、また⾦を担保とする貸付が増加しているのに対して、古い⾦宝飾品の純然たる売却が⽐較的少ないのは、消費者の困窮が要因ではなく、おそらくは売却⽤の古い宝飾品を保有する⼈たちが、⾦価格のさらなる上昇を期待していることを⽰唆しています。
過去数四半期の間に、⾦の実勢価格は、リサイクル供給レベルに影響を与える要因の⼀つにすぎないことが証明されました。⾦のさらなる値上がり(または、現地通貨安)への期待も重要であり、さらには国内経済の動向や全体的な消費者マインドも重要です。主要国の経済が異なる動きを⽰していることから、今後数四半期のリサイクル供給の⾒通しは、ここ最近と同じように不透明なものになる可能性が⾼く、また、最近増加しているリサイクル供給の絶対的レベルも、世界的
な⾦融危機の際に記録した最⾼値からは程遠く、新型コロナパンデミック時に到達したレベルをいまだに超えていないことは、あらためて記しておく価値があります。