テクノロジー

30 July, 2024

AI と⾼性能コンピューティングアプリケーションが、今期の⾦需要回復の継続をけん引しました。

  •  今期、産業⽤途で使⽤された⾦は前年同期⽐ 11%増の 81トンで、今年上半期の需要も同様に前年同期⽐がプラスとなり 162 トンに達しました。
  • この成⻑をけん引したのが、今期、前年同期⽐で 14%増の68 トンとなったエレクトロニクス分野でした。
  • その他の産業⽤途に使⽤された⾦は前年同期から横ばいの11 トンで、⻭科⽤途需要は⻑期低落傾向が続き、前年同期⽐ 5%ダウンの 2 トンとなりました。
トン2023年第2四
半期
2024年第2四
半期
前年同期比%
テクノロジー72.881.111
エレクトロニクス59.167.614
その他工業用11.311.30
歯科用2.42.3-5

出所:メタルズ・フォーカス、ワールド ゴールド カウンシル

今期、テクノロジー分野の需要回復が続いたのは、AI や⾼性能コンピューティングなどの成⻑アプリケーション分野で使⽤される最先端半導体が⼤きく貢献した結果です。今期は、ゆるやかなペースではあるものの家電製品需要がさらに回復しました。第 3 四半期には、⼤⼿スマートフォンメーカーが新型モデルを発売することから、その傾向が加速されるものと思われます。

エレクトロニクス

エレクトロニクス産業で使⽤される⾦は 3 四半期連続で前年同期⽐ 2 桁の成⻑となりました。ほとんどの⼤⼿半導体メーカーが旺盛な需要と堅調な業績を報告しています。世界最⼤のメモリチップメーカーである SK ハイニックスとマイクロンは、ハイエンドメモリチップの 2024 年在庫分がすでに完売となり、2025 年⽣産分もその多くが予約済みであることを公表しました1。サムスンは、AI ⽤半導体需要の「急増」を受け、今期の収益が 23%増加すると予測しています2。さらに範囲を広げると、世界半導体市場統計グループが順調な18 ヵ⽉間⾒通しを⽰しており、半導体市場全体の今年の成⻑率を 16%と予測しています3

今期、発光ダイオード(LED)に使⽤された⾦は前年同期より若⼲増加しました。⼤規模スポーツイベント(特に、EURO 2024 とパリ・オリンピック)のおかげで、ディスプレイおよびフラットパネルに対する需要が旺盛でした。そのためメーカーは⽣産を上半期に集中させ、結果的に設備稼働率が上がりました。今年後半にかけてディスプレイ需要が通常のレベルに戻ったとき、この成⻑速度が維持されるかどうかは不明です。他の LED ⽤途の開発が続けられています。例としては、空気清浄や浄⽔、⾷品保存などがあります。こうしたタイプの機能の家庭⽤機器への導⼊が増えることで、注⽂が増加する可能性が⾼まります。最先端⾚外線 LED も、⾃動⾞や充電施設、先進型ドライバー⽀援システム、ロボティクスなど、幅広い⽤途での使⽤増加に伴い勢いを増しています。

プリント基板(PCB)需要も今期、増加しました。この需要増をけん引したのは、⾼濃度の⾦を含むハイエンド PCB と、サーバー向けおよび衛星向け製品に対する旺盛な需要でした。第 1 四半期に報告したように、この分野では、例えば市場に参⼊して、新たな⽤途を開発拡⼤している台湾など、多くの東南アジア諸国/地域の⽣産能⼒が増⼤していることにより構造的変化が続いています。

今期、メモリチップ需要は堅調を維持しました。これは、この分野における極めて重要な⽤途である AI と⾼性能コンピューティングインフラの需要が急速に増加したことによるものです。最近の数四半期に、⾼性能コンピューティング分野⽤の⾼帯域幅メモリ(HBM)4チップの需要が⼤きく伸び、その需要増に対応するためにすべての主要メーカーが増産を開始しています。家電製品分野も回復しつつあり、PC やスマートフォン、サーバーに対する需要増によって、PCB 基板需要の増加に貢献しました。この傾向は下半期も続くと予想されており、メモリチップメーカーにとっては好調な 1 年になる可能性があります。

ワイヤレス機器分野は今期も好調で、回復が続いています。
ピークシーズンの第 3 四半期への準備のためにスマートフォンおよび WiFi 設備の両分野で、パワーアンプに対する需要が堅調でした。それに伴い、メーカーの設備稼働率も上がりました。さらに稼働率上昇に拍⾞をかけたのが、⾃動⾞と低軌道⼈⼯衛星(LEO)の 2 分野における需要増です。LEO 分野では打ち上げ数が⼤幅に増加していて、例えばスターリンクは、今年初めに 6,000 基⽬の⼈⼯衛星を打ち上げました5。ワイヤレス機器需要の⾒通しは、世界中で通信システムの統合が進められていることや、その統合を⽀えるインフラに対するニーズのおかげで明るいものがあります。

総計レベルでは、世界中の主要なエレクトロニクス製品⽣産加⼯拠点のすべてで、今期の⾦需要が前年同期⽐でプラスとなりました。⽇本 19 トン(+27%)、韓国 7 トン(+34%)、⽶国 17 トン(+4%)、および中国620 トン(+14%)

その他の産業⽤途と⻭科⽤途

その他の産業⽤途における今期需要は前年同期⽐横ばいの 11トンでした。イタリアではアクセサリーの販売量が減少し、インドでは総選挙や婚姻件数の減少、ジャリ(伝統的⾐装のサリーに使われる⾦⽷)の節約で、取引量が減りました。しかし、こうした減少の多くを補ったのが中国の⾦メッキ宝飾品に対する需要増でした。⻭科⽤途需要は今期も構造的な減少が続き、前年同期⽐ 5%減の 2.3 トンとなりました。

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