出所：メタルズ・フォーカス、ワールド ゴールド カウンシル
。エレクトロニクス分野では、消費者需要の減少がサプライチェーン全体への圧力を高め、その結果、発注の減少や急速な工業稼働率の低下、多数の大手半導体メーカーの相次ぐ業績予想の修正につながりました 1。また、米国が中国への半導体および半導体製造機器の輸出に課した制限も、中国のみならず、供給インフラの再編が急がれている東アジアの半導体市場全体で、サプライチェーンにダメージを与えています 2。これにより、新型コロナウイルスコロナパンデミックの余波や世界中で進行中の地政学的課題への対応を続けているセクターでは、状況がさらに複雑化することになります。年間投資予算を 10％削減すると共に、需要減速が収益面で短期的問題となるとの予測を明らかにしました 3。
発光ダイオード（LED）分野の金の需要は、家電製品需要の低迷により、第 3 四半期も引き続き急速に減少しました。ノートパソコンなどの PC 分野は特に大きな打撃を受けており、調査会社ガートナーによると、第 3 四半期の PC 出荷台数は前年同期比 20％減の 6,800 万台でした。これは、ガートナーが 30 年近くにわたり発表してきた中でも最も急激な減少率です 4。これとは別に、ウェアラブルデバイスの販売鈍化により、（スマートウォッチやスマートフォンに使われている皮膚センサーや心拍数トラッカーなどのヘルスケア用 UV-LED や IR-LED など）ハイエンド LED の需要が冷え込み、これまで数四半期にあった力強さが消えてしまいました。最後に、（金の使用量が少ない）ミニ LED 技術への移行が続いていることは相変わらず脅威ではありますが、実装コストが依然として比較的高いことや、広範囲に及ぶさまざまな市場の問題から、ミニ LED 搭載デバイスの普及がさらに遅れる可能性があります。
メモリ分野では、第 3 四半期中に金の需要が減少し、今後数四半期にわたりさらに減少することが予想されています。このセクターは、家電製品の需要減少と、ハイパースケールデータセンター関連の発注減少という 2 つの打撃を受けました。直近の数四半期における仮想通貨マイニングの大幅な減少も、グラフィックカードの需要に継続的悪影響を及ぼしており、一部のメーカーでは在庫が急増しています。その結果、半導体メーカーは生産と投資の両方で削減を開始しています。例えば、日本最大の半導体メーカーの 1 つであるキオクシアは、10 月から四日市工場と北上工場の半導体生産量を約 30％削減することをと発表しました 5。しかし、国際市場における現在の困難な状況を考えると、（金の使用量が少ない）小型アーキテクチャへの移行は、2023 年半ばまで先延ばしされる公算が高く、短期的に見た場合、メモリ分野の金需要に対して、多少の執行猶予が与えられることになります。
第 3 四半期、ワイヤレス機器分野の需要は大きく減少しました。ここ数四半期のスマートフォン需要の低迷により、パワーアンプの在庫が急増しました。主要市場で需要が引き続き弱いことが予想されているため、在庫レベルを管理しやすいレベルまで下げるよう発注が削減されました。第 2 四半期に報告したように、政府や大企業からの大量の事前注文のおかげで、5G インフラ施設に関する金の需要は安定した状態にあり、それは今後しばらく続くものと思われます。低軌道衛星（LEOS）6 や光検出と測距（LIDAR）7 などの他の応用分野は安定しているものの、ワイヤレス分野の需要に占める割合が比較的小さいため、市場の家電製品セグメントで報告されている下落を相殺することはできません。ただし、前述の在庫調整が一巡すれば、この分野はノーマルな運用に戻ることが予想されており、ワイヤレス用途における金取引量をハイエンドチップが押し上げ続けていくと思われます。最後に、プリント基板（PCB）分野は、第 3 四半期中安定した状態を保ちました。高密度認定デバイスに対する自動車メーカーの需要が根強いことから、自動車用半導体の品薄状態が PCB 生産を支える結果となりました。ただし第 3 四半期では、家電製品の需要の低迷が PCB 分野に影響を与え始め、それが 2022 年第 4 四半期で悪化する可能性があります。より長期的観点から見た場合、高速コンピュータや LEOS などの新しい用途や、自動車用電子機器市場の継続的進化が、PCB の需要を支える可能性が高いため、楽観的な見方が続いています。総合レベルでは、世界の電子機器製造の 4 大拠点すべてで、第 3 四半期の金需要が前年同期比で大幅な減少となりました。韓国、米国、日本、中国／香港の数値はそれぞれ 7 トン（－ 7％）、 16 トン（－ 2％）、18 トン（－ 11％）、16 トン（－ 16％）となっています。
その他産業用途と歯科用途
その他の産業用途は、主に中国での混乱のため、前年同期比 2％減の 11 トンになりました。イタリアではメッキ溶液の需要が伸びたことにより微増が記録され、インドでは同国の広範な経済回復のおかげで増加が記録されました。歯科需要は、主要市場である日本のさらなる構造的減少を背景に、前年同期比 11％減の 3 トンとなり、四半期としてはこれまでにない低水準まで落ち込みました。
