第3四半期の金の総供給量は前年同期比で5%増加しました。鉱山生産量は四半期の最高記録となりました。
- 今期の金の総供給量は5%の増加で、これには鉱山生産量とリサイクルの両方が貢献しました。
- 年初からの総供給量は前年同期比3%増の3,762トンで、その背景には今年、鉱山生産量が第1~第3四半期としての最高を記録し、3%増加したことがあります。
- 今期、リサイクル金の量は前年同期比で11%の増加でしたが、金価格が過去最高を記録したにもかかわらず、前四半期比では4%の減少となりました。
30 October, 2024
トン | 2023年第3四 半期 |
2024年第3四 半期 |
前年同期比% | |
供給合計 | 1,249.6 | 1,313.0 | 5 | |
鉱山生産 | 935.7 | 989.8 | 6 | |
正味生産者ヘッジ | 23.8 | 0.2 | -99 | |
リサイクル金 | 290.1 | 323.0 | 11 |
出所:メタルズ・フォーカス、ワールド ゴールド カウンシル
今期は供給に関わるすべての構成要素に力強さが見られました。鉱山生産量は990トンに達し、2000年までさかのぼれるワールド ゴールド カウンシルのデータにおいて、第3四半期の最高記録となりました。リサイクルは前年同期比11%増の323トンでした。暫定推計では、今期の産金会社ヘッジポジション正味残高は実質的に変化がなかったことも示されています 。1
今第3四半期、鉱山生産量は引き続き好調で、前年同期比で6%増加して、過去最高記録となりました。今年の第1~第3四半期は各四半期別の新記録を更新し、年初来の鉱山生産量は、2018年の第1~第3四半期に達成した記録を上回りました。
前四半期比では、主に通常の季節的変動から、生産量は9%増加しました。世界の金生産量には若干の季節性があります。2023年までの10年間平均で、上半期の鉱山生産量は年間生産量の48%となっています。上半期の鉱山生産は、多くの生産国でクリスマス休暇とイースター休暇の影響を受けます。さらに一部の操業地では、極度の低温によって沖積鉱床やその他地上での操業が制限されます。
今期、4ヵ国の鉱山生産が世界の生産量増加のけん引役となりました。
一部の国の操業地では、品位の低下や生産の一時停止などによる打撃を受けました。
ほとんどの地域で供給増加が予想されていた今期、北米が最高の16%増を達成し、次いでオセアニアと中南米がともに前年同期比7%の増加となりました。
こうした傾向とは裏腹に、ブルガリアにあるダンディー・プレシャス・メタルズのアダ・テペ鉱山での計画的な低品位採掘など、多くの鉱山の生産量削減により、欧州の供給量は前年同期比で5%減少しました。
今年、採掘コストは引き続き増加しました。ワールド ゴールド カウンシルがデータを持っている中で、直近の四半期である今年第2四半期に、サスティニング生産コストが前年同期比で6%増となり、四半期として過去最高の1,388米ドル/オンスに達しました。依然として、一般の物価上昇率を上回ってはいるものの、採掘コストの上昇は過去12ヵ月間で鈍化しており、原油価格やその他のエネルギー投入コストの安定から恩恵を受けているものと思われます。
今年の進展状況とメタルズ・フォーカスの情報を踏まえると、年間鉱山生産量が2018年に記録した3,658トンを上回り、最高記録を更新する可能性が高まっています。
当初の推定では、今期の供給に対する産金会社のヘッジの貢献は限定的であると考えられていました。ワールド ゴールド カウンシルでは、世界の産金会社ヘッジポジション正味残高累計は、今第3四半期には変化がないと推定していましたが、いつものように今後1、2ヵ月ほどの間に、鉱山会社からの第3四半期実績の公表があれば、訂正する必要が生じる可能性があります。
包括的な情報が入手できる最新の四半期である今年第2四半期では、デルタ調整後の世界の産金会社ヘッジポジション正味残高は9トン増の222トンとなりました。年初からは、ヘッジポジション正味残高は16トン減少したと推定されます。
今期、金のリサイクルは323トンに増加しました。(すべての通貨で)金価格が過去最高を記録したことで、すべての地域でリサイクル供給量は前年同期比プラスとなりました。今期の好調な金のパフォーマンスを考えると、前四半期比がマイナスになったことは驚きでした。中東と南アジアの2つの地域では前四半期よりも増加しましたが、その他の地域、特に、今年第2四半期に前四半期比で大幅な増加を記録した東アジアと欧州で今期生じた減少が、上述した2地域の増加分を上回り、打ち消す結果となりました。
前四半期よりも減少したことについては、第2四半期に金価格が記録的高値へと急上昇したことにより当初受けた大きな衝撃が多少弱まってきたことで、少なくとも部分的な説明はつくとの見方がリサイクル業界にはあります。今期、金価格は大幅に上昇しましたが、金価格が新たな記録的水準に達したことに対する消費者の驚きはさほど大きなものではありませんでした。販売価格は今後さらに上がるという投資家らの予想により、今期のリサイクルが下振れする可能性も十分にあります。輸入関税の大幅引き下げによって、インドではリサイクル量がさらに減少し、国内価格の実質的引き下げにつながりました。
リサイクル量が前四半期比でプラスになった地域の一つが中東です。その増加に大きく貢献したのがトルコです。自国通貨のトルコ・リラが比較的安定していて、金利が非常に高いことから、保有者が金宝飾品を売却し、その売却益を最大50%の金利で投資するようになったことが背景にあります。今期、中東の広い範囲で進行中の紛争によって一部に投げ売りが見られました。この状況は今後も続くものと思われます。
インドでは7月初めに、金輸入関税の予想外の大幅引き下げが行われたため、リサイクルは米ドル建て金価格の上昇によってもたらされるであろう予想増加量を下回りました。これは、今期中に見られた宝飾品の購入増加と連動した動きです。関税引き下げのもう一つの影響はゴールドローン会社による売却でした。ゴールドローン会社は不良債権による損失を抑えるため、ルピー建て金価格が下落したことを受けて、保有資産の一部を競売にかけたのです。
中国のリサイクル量は前年同期比で増加しましたが、前四半期比では約9%減少しました。前四半期比がマイナスになった要因の一つが、第2四半期に行われた流通在庫の大量処分です。第2四半期に価格が高騰したことで、重量のある宝飾品の売上が低迷したため、小売業者や卸売業者は即座にそれらをリサイクルに回し、代わりに軽量の宝飾品を調達しました。
全体的に見て、今期のリサイクル供給が多くの欧米市場で低調だったのはやや意外な結果でした。それは、経済の減速が投げ売りのきっかけになるとワールド ゴールド カウンシルでは予想していたからです。欧米市場のリサイクル量は長期平均を下回っており、中間在庫がかなり枯渇していることがうかがわれます。また、消費者の投げ売りが広がっているという証拠はほぼないといってよいでしょう。