今後の見通し
30 October, 2024
第4四半期および通年の見通しの指針となる主な要因は、以下の通りです。
- 金の輝かしい年初来リターンにメディアの関心が高まる中、投資家の参加が広がり、金価格の上昇が継続
- 中東情勢の緊迫化と、非常に二極化した米国大統領選挙に起因する地政学的な不確実性が、投資意欲の高まりと、予想を下回るリサイクルの低調さの原因に
- 世界の金利政策における変化が金保有の機会費用を低下させ、金投資への関心をさらに促進
投資
第3四半期の金地金・金貨はワールド ゴールド カウンシルの予想を下回りましたが、年初来の合計は859トンと、10年間平均の774トンと比べると依然として堅調です。記録的な金価格の高さによって一部で購入が手控えられる可能性はありますが、地政学的リスク、景気減速懸念、金価格の急騰が、この力強い数字に拍車をかけています。
第4四半期も概ねこのような状況が続くと思われますが、米国大統領選挙後にボラティリティが高まる可能性があることから、あと1四半期を残すのみとなった通年の結果は、通常の年末よりも幅を持たせて検討しなければなりません。
欧米で上場する金ETFがようやく動き出し、2022年第1四半期以降で初めて、世界全体で流入となりました。投資見通しについては他に、第4四半期には米国政治がボラティリティを高める可能性が高いため、金ETFの結果の予測が大統領選挙の結果の予測と同じく困難になっています。とはいえ、米連邦準備制度理事会(FRB)が予想通りの利下げの道筋をたどり、その他の条件がすべて同じだとすれば、大幅な財政赤字や株式市場の割高感が触媒として加わって、ETFへの関心は継続すると思われます。
資金運用会社のネットロング・ポジションを介した投機的先物エクスポージャーは拡大していると見られます。しかし歴史的に見て、過度に強気なポジションは、過度に弱気なポジションよりも価格の逆張りシグナルとしては弱いものです。
鉱山供給
第3四半期の生産は幅広く増加し、通年の新記録へと近づきました。全維持生産コスト(all-in sustaining cost:AISC)は上昇したものの、エネルギー価格の軟化と金価格の急上昇が、非常に良好なマージンの維持に貢献しました。このことが第4四半期のさらなる増益をもたらし、通年見通しが若干上方修正されるかもしれません。
リサイクルは価格上昇への反応が低調でした。中国と欧米の市場で中間在庫が枯渇しているとの報告があり、第4四半期のリサイクル供給も頭打ちになりそうです。ワールド ゴールド カウンシルは、リサイクルについては上振れよりも下振れのリスクのほうが大きいと考え、通年予測を下方修正しました。
中央銀行
第3四半期の需要が減速した原因は、価格の急上昇を受けて一部の中央銀行が購入を中断したことと、その他の中央銀行による戦術的な小規模売却だっだったと思われる。しかし、価格が上昇しても、金の配分を増やすことへの長期的な意欲が衰えていないことを示すエビデンスもあります。ワールド ゴールド カウンシルは、通年の購入は好調を維持するが過去2年の水準は下回ると見て、通年見通しを前四半期の推計からほぼ据え置きとしています。
加工需要
今年の宝飾品は金額ベースでは非常に底堅く推移していますが、トンベースでは価格高騰の影響を受けており、年初来の合計は、2000年までさかのぼるワールド ゴールド カウンシルの四半期データセットの中でも屈指の低調さです。宝飾品購入者が購入ペースを上げるためには、価格の安定あるいは経済見通しの大幅な改善のどちらかが必要でしょう。とはいえワールド ゴールド カウンシルの従来の予測はかなり悲観的なものであり、第3四半期はインドが相当程度伸びたことから、通年予測をやや上方修正しました。
今期のテクノロジー需要は、持続するAIブームに支えられて、ワールド ゴールド カウンシルの予想を若干上回りました。しかし同セクターの需要にはいくつかのリスクがあり、通年予測は前四半期から据え置きとします。