今第3四半期、テクノロジー分野での金の使用量は増加しましたが、サプライチェーンは慎重な見通しを示しています。
- 今期の産業用途での金使用量は、前年同期比7%増の83トンでした。
- テクノロジー需要の大半を占めるエレクトロニクス分野は、前年同期比9%増の69トンでした。
- その他の産業用途は12トンで前年同期比1%増と微増だった一方で、歯科用途需要は長期減少傾向が続いており、前年同期比4%減の2トンでした。
30 October, 2024
トン | 2023年第3四 半期 |
2024年第3四 半期 |
前年同期比% | |
テクノロジー | 77.3 | 83.0 | 7 | |
エレクトロニクス | 63.3 | 69.0 | 9 | |
その他工業用 | 11.7 | 11.8 | 1 | |
歯科用 | 2.3 | 2.2 | -4 |
出所:メタルズ・フォーカス、ワールド ゴールド カウンシル
例年、第3四半期は多くの大手エレクトロニクス企業が新たな製品やデバイスを市場に投入するため、エレクトロニクス需要が最も高まる時期です。今年も例外ではなく、すべての大手スマートフォンメーカーが新製品を発表しました。しかし、需要は予想をわずかに下回ったと報じられており、たとえばサムスンはデバイス出荷数が減少したことを明らかにしています 。その結果、業界は現在の在庫と将来の売上予測の両方に関して慎重な見方を示しています。
エレクトロニクス分野の需要は第3四半期に高まりましたが、業界は今年の残り期間については慎重な姿勢を崩していません。市場調査会社のIDCによると、スマートフォンの出荷台数は5四半期連続で増加しました。今期の出荷台数は3億1,600万台に上り、特に東アジアにおいて好調でした。IDCはまた、中国の経済不安を指摘した上で、従来型パソコンの出荷は今年も横ばいになると報告していましたが、ユーザーがAI対応デバイスにアップグレードすることで、長期的増加に転じる可能性があります.2 欧州および米国では、自動車分野と航空宇宙分野の業績低迷のため、メーカーが原材料の在庫管理を厳しく行うようになりました。
プリント基板(PCB)に使用される金は今四半期も好調でした。 AI対応サーバーには高性能PCBが必要であることから、今期も好調さをけん引したのはAIでした。自動車用電子機器でも、安全であることが絶対必要な機能の信頼性を保証するため、ハイエンドPCBが使用されています。需要が伸びているもう一つの分野が低軌道(LEO)人工衛星です。PCBとワイヤレスコンポーネントはともに、長期的な金需要の発生源になる可能性があります。
今第3四半期、発光ダイオード(LED)に使用される金は若干増加しました。これは、LEDが持つ高い信頼性が重要な意味を持つ自動車分野で採用が増えたことが要因となっています。ハイエンドIR-LED製品の需要は、センシングや産業オートメーションに関連する幅広い応用分野で着実に増加を続けており、金の需要にとってプラスの材料となっています。ただし、ミニLEDの使用は、ペースはかなり遅いものの、従来のLED市場にさらに広がっています。
メモリ分野の金需要も小幅ながら増加しました。これは、データセンター向けや高性能コンピューティング(HPC)用の高帯域幅メモリ(HBM)などのハイエンド製品に対する強い需要が押し上げたものです。しかし、ミッドレンジからローエンド製品の需要の伸びは、家電製品サプライチェーンにおける在庫がボトルネックとなって抑制されました。この分野では、激しい競争によって大きな変動が起きており、世界最大のメーカーであるサムスンは、SKハイニックスやマイクロンなどのライバルによる激しい追い上げを受けています。実際、マイクロンは先頃、NANDチップ生産による四半期収益が初めて10億ドルを超えたことを発表しました。3
5G対応スマートフォンの導入が続いていることで、ワイヤレス分野での金の使用量が増加しました。生成AI(GenAI)を搭載し、WiFi-7に対応したスマートフォンの割合も増加しています。今のところ、生成AI搭載/WiFi-7対応スマートフォンは、年末までに市場シェアが20%に達すると予想されています。4
東アジア3ヵ国の主要電子機器製造拠点では今期、金需要が前年同期比で次のように増加しました。日本(20%)、韓国(20%)、中国本土および香港(10%)。一方、米国は減少(-4%)を記録しました。
その他の産業用途では、インドの価格下落とイタリアの在庫調整を東アジアでの増加が穴埋めしたため、今期は前年同期比で小幅な増加となりました。歯科用途の需要は構造的低迷が続いています。