供給

5 February, 2025

2024年の総金供給量は、鉱山供給量とリサイクルがともに増加したため、前年同期比1%の増加となりました。

  • 年間鉱山生産量は前年比ではわずかな増加でしたが、過去最高を記録しました。
  • 2024年、世界のヘッジポジション正味残高は大きく減少して182トンでした。
  • 2024年のリサイクル金供給量は11%増加しましたが、2012年の過去最高値には16%及びませんでした。
トン 2023 2024 前年同期比
総供給量 4,945.9 4,974.5 1
鉱山生産量 3,644.1 3,661.2 0
産金会社のネットヘッジ 67.4 -56.8 -
リサイクル金 1,234.4 1,370.0 11

今年の金の総供給量は、鉱山生産量とリサイクル供給量の増加により、前年同期比1%増の4,974トンとなり、ワールド ゴールド カウンシルの30年間のデータシリーズの中で最高となりました。当初の推計では、今年の鉱山生産量は過去最高の3,661トンに達するとされていましたが、この数字は今後修正される可能性があり、これまでの最高記録が破られたと断言するのは時期尚早です。

初期段階の推計でも、産金会社のネットヘッジは今年1年で大幅に減少したことが示されていますが、これは生産者が満期を迎えた契約を履行し、より長期のヘッジを買い戻したためです。

 

図11:推計で今年金鉱山生産量は新記録を達成した

金の年間鉱山生産量(トン)*

図11:推計で今年金鉱山生産量は新記録を達成した

図11:推計で今年金鉱山生産量は新記録を達成した
金の年間鉱山生産量(トン)*
*データは2024年12月31日現在。 出所:メタルズ・フォーカス、リフィニティブGFMS、ワールド ゴールド カウンシル

出所: メタルズ・フォーカス, リフィニティブGFMS, ワールド ゴールド カウンシル; 免責事項

*データは2024年12月31日現在。

鉱山生産量

現行の推計では、今年の鉱山生産量はさらに増加して前年同期比1%増の3,661トンとなり、2018年に記録された3,656トンをわずかながら上回ると予想されています。しかし、今後生産量の修正が見込まれていることから、2024年が鉱山生産量の新記録達成の年となるかどうかはまだ断定できません。ワールド ゴールド カウンシルの今年第4四半期に関する現行の推計も例年の通り、大半の企業が四半期報告書を発表する前に策定されたものであるため、最終的数字はワールド ゴールド カウンシルの現行推計とは異なることになると思われます。今年の第2四半期と第3四半期でも、修正によって鉱山生産量が当初の推計より減少しており、同じことが再び起こることもあり得ます。

四半期データからも、今の業界の成長傾向が終わりに近づいている可能性を見て取ることができます。今年第4四半期の鉱山生産量は954トンで、昨年同期の955トンをほんのわずか下回ると推定されています。
年間生産量が増加したのは昨年の労働争議から回復したメキシコであり(前年から14トン増、前年同期比では11%増)、カナダ(同14トン増、同7%増)では、アイアムゴールド社のコテ鉱山やエクイノックス・ゴールド社のグリーンストーン鉱山など新しい大規模鉱山が生産量の増加に貢献し、ペルー(同7トン増、同5%増)やギニア(同4トン増、同6%増)も寄与しました。

米国(前年から16トン減、前年同期比では9%減)では、バリック社のカーリン鉱山とコルテス鉱山の品位と生産量の低下により年間生産量が減少し、オーストラリア(同10トン減、同3%減)、ボリビア(同7トン減、同14%減)、コンゴ民主共和国(同4トン減、同8%減)も同様の結果となりました。

2024年第4四半期においては、4ヵ国の鉱山生産が要因となり、世界生産量は前年同期比でわずかにマイナスとなりました。

  • 米国の生産量は、鉱石品位の低下により、コルテス鉱山やカーリン鉱山を含む多くの鉱山で生産量が減少し、18%のマイナスとなりました。
  • ブルキナファソでは、採掘順序と、備蓄してあった低品位鉱石を使用したことによって、エサカネ鉱山のヘッドグレードが低下し、鉱山生産量が前年同期比で13%減少しました。
  • インドネシアの生産量は、グラスベルグ鉱山の品位低下と、採掘順序によってバツ・ヒジャウ鉱山の生産量が影響を受けたことから、前年同期比で12%減少しました。
  • 南アフリカでは、ベアトリクス鉱山やサウスディープ鉱山などいくつかの鉱山で粉砕処理施設の処理能力が低下したことが報告され、鉱山生産量は前年同期比で6%減となりました。

次に挙げる4ヵ国の鉱山による生産量の増加では、上記の減少を相殺することができませんでした。

  • マリでは、コラリ・スッド鉱床での高品位鉱石の採掘が早期に可能となった後、アリアン・ゴールド社のサディオラ金鉱の生産量が増加したことで、前年同期比11%の伸びを記録しました。
  • カナダの場合、コテ鉱山とグリーンストーン鉱山の生産が引き続き増加し、またブルースジャック鉱山も増産となったため、生産量が前年同期比で10%増となりました。
  • ウズベキスタンでは、アルマリク鉱山とナヴォイ鉱山の生産量増加により、前年同期比で8%増加しました。
  • ロシアの鉱山生産量は、ポリウス社のオリンピアダ鉱山の回収率向上とマガダンおよびヤクーチア地域での生産量増加により、前年同期比で5%増加したと推定されています。
 

図12:今年、金の記録的高価格が金リサイクル量の増加に拍車をかけた

移動4四半期のリサイクル総量(トン)と平均価格(米ドル)

図12:今年、金の記録的高価格が金リサイクル量の増加に拍車をかけた

図12:今年、金の記録的高価格が金リサイクル量の増加に拍車をかけた
移動4四半期のリサイクル総量(トン)と平均価格(米ドル)
*データは2024年12月31日現在。 出所:ICEベンチマーク・アドミニストレーション、メタルズ・フォーカス、リフィニティブGFMS、ワールド ゴールド カウンシル

出所: ICEベンチマーク・アドミニストレーション, メタルズ・フォーカス, リフィニティブGFMS, ワールド ゴールド カウンシル; 免責事項

*データは2024年12月31日現在。

鉱山生産量の地域別傾向では、それぞれ6トンと4トンの増加となったCIS諸国とオセアニア地域だけが今年第4四半期の生産量で増加を記録しました。その他の地域では生産量が減少し、中でも中南米と北米の2地域はいずれも前年から3トンのマイナスで、最大の減少となりました。

年間生産能力の(新規操業と操業再開を合わせた)合計が10トンを超える4つの鉱山スタートアップ企業が先頃、生産を開始しました。ガーナの新鉱山ナムディニの年間平均生産量は約9トンと予想されており、オーストラリアのポールセンズ・ゴールド鉱山の年間生産量は約1トン、ザンビアのカセンセル・プロジェクトの年間生産量は約0.1トンがそれぞれ見込まれていて、グリーンランドのナルナック・ゴールド鉱山は今年後半に生産を再開しましたが、計画生産率はまだ公表されていません。

金の採掘コストは(入手可能な中で最新のデータである)今年第3四半期も引き続き上昇しました。全維持生産コスト(AISC)の平均値が、第3四半期に1,456米ドル/オンスの過去最高を記録しました。前年同期比では9%、前四半期比では4%の増加です。今年第4四半期のコスト上昇の主な要因は、(金価格の上昇によって増加した)ロイヤルティの支払、投入コスト(特に人件費と電力費)の上昇、維持資本支出の増加でした。複数の大手産金会社は、第4四半期中に工場の定期メンテナンスにより生産量が減少しましたが、これも単位当たりAISCを押し上げる要因となりました。

産金会社のネットヘッジ

産金会社ヘッジポジション正味残高累計は、今年の各四半期で減少となったことで、年間合計では23トン減少して182トンになると推定されています。この減少の一因となったのが合併・買収(M&A)活動です。多くの場合、買収企業は被買収企業のヘッジポジションを再編したり、清算したりしますが、今年はそれが数回行われました1。また、一部のヘッジブックが現在大幅にアウトオブザマネーとなっているため、一部の企業はフォワードブックを再編したり、完全に解消したりしています。同時に、新たなヘッジポジションに関する重大な発表はなく、業界のヘッジブックの削減傾向は今後も続くことが考えられます。

リサイクル

金価格の上昇はリサイクル金の供給量増加につながる傾向があり、世界中で金価格が記録的な水準にあることから、第4四半期にこの分野で前四半期比および前年同期比が上昇したことは驚くには当たりません。2024年第4四半期のリサイクル金の供給量は359トンで、前年同期比で15%、前四半期比で10%の増加となりました。これは、新型コロナウイルスパンデミックの影響で金価格が急騰した2020年第3四半期以来、単一四半期のリサイクル供給量としては最大となりました。

すべての地域でリサイクル供給量が前年同期比で増加し、中東を除くすべての地域で前四半期比でも増加しました。平均金価格(米ドル/オンス)の上昇(前年同期比+35%、前四半期比+8%)を考慮すると、リサイクル供給量がさらに増加していても不思議ではありませんでした。

地域別パフォーマンスを詳細に見ると、前年同期比および前四半期比の上昇の大部分は東アジアがけん引し、量的には中国が大半を占めたことが明らかです。金価格以外では、国内経済の弱さがリサイクル量増加の要因となっているようです。第4四半期中、数社の宝飾品小売業者が廃業し、在庫処分が行われた一方、営業を続けた他の小売業者も売れ行きの悪い商品ラインをいそいで処分しました。金価格に対する期待も影響した可能性があり、米国の選挙でトランプ氏と共和党が圧倒的勝利を納めたのを受け、金価格が下落すると予測する声もありました。

 

図13:東アジアが第4四半期のリサイクル量を押し上げた

リサイクル金量の前年同期比および前四半期比の変化(トン)

図13:東アジアが第4四半期のリサイクル量を押し上げた

図13:東アジアが第4四半期のリサイクル量を押し上げた
リサイクル金量の前年同期比および前四半期比の変化(トン)
*データは2024年12月31日現在。 出所:メタルズ・フォーカス、ワールド ゴールド カウンシル

出所: メタルズ・フォーカス, ワールド ゴールド カウンシル; 免責事項

*データは2024年12月31日現在。

他の地域の反応が比較的落ち着いていたのは、リサイクルに回せる、最終製品になる前の中間在庫の宝飾品が不足していたためと考えられます。価格が一段と上昇しても反応が比較的鈍かったのは、過去数年の間に金価格が着実に上昇してきたことで、すでに相当量に上る古い宝飾品や不要になった宝飾品が処分されているためです。また、記録的な金価格の影響で、大量の金メッキ品がリサイクルに回されたという注目すべき話もあります。金の含有量が非常に少なく(全重量の1%未満)、金の組入比率と価値が採算に合わないことから、金メッキ製品がリサイクルのために回収されることは極めて稀です。

金価格は依然として高値を維持しており、世界的な金価格から期待されるレベルには届かないものの、リサイクル量は2025年も堅調に推移するものと思われます。2025年のリサイクルおよび供給全般の見通しの詳細については、「今後の見通し」セクションをご覧ください。

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