テクノロジー
5 February, 2025
- 第4四半期、エレクトロニクス製品向け金使用量が小幅ながら増加した(前年同期比3%増の70トン)ことが、同四半期のテクノロジー分野全体の成長(前年同期比2%増の84トン)をけん引しました。
- テクノロジー分野の年間需要は7%増の326トンでした。
- 回復に大きく貢献したのはハイエンドAIインフラに対する旺盛な需要であり、低調ながらも徐々に回復しつつある家電製品市場を下支えしました。
トン | 2023 | 2024 | 前年同期比 | |
テクノロジー | 305.2 | 326.1 | 7 |
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エレクトロニクス | 248.7 | 270.6 | 9 |
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その他産業用途 | 47.1 | 46.5 | -1 |
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歯科用途 | 9.4 | 8.9 | -5 |
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第4四半期が堅調だったおかげで、テクノロジー分野の金需要は改善された状態で1年を終えることができました。今年、(テクノロジー分野の金需要の主力カテゴリーである)エレクトロニクス製品に対する需要は、AI関連用途向けの需要が引き続き堅調であったことと、特に低調だった2023年以降の家電製品市場の回復によって増加しました。大手市場分析会社のIDCは、2024年のスマートフォン出荷台数は6%の増加であったと推計しています1 。その増加を後押ししたのが、中国国内市場や新興市場での低価格デバイスの販売に注力した中国系ベンダーの「超積極的」な成長でした。その結果、高級製品に多くの金を使う傾向があるアップルとサムスンはともに、市場シェアが前年同期比でマイナスになりました。IDCは、ペースは落ちるものの、2025年も成長は続くと予測しています。ガートナーは、PC市場やノートパソコン市場でも同様の傾向が見られ、需要は2025年も引き続き増加するとの予測を発表しました2。
エレクトロニクス
第4四半期に、エレクトロニクス製品分野の金需要は前年同期比3%増の70トンとなり、年間需要は9%増の271トンに達しました。この回復は、この分野における金需要に対するAI用途の重要性が高まっていることをはっきりと示しています。
第4四半期に、プリント基板(PCB)に使用された金は前年同期比で増加しました。この分野の需要を押し上げたのはAI関連用途と人工衛星インフラです。AIサーバーのアップグレードは、2025年も引き続き注目を集めることになるでしょう。事例報告によると、PCBの金コーティングの節減(つまり、金メッキをさらに薄くすること)で新たな取り組みが行われているものの、この分野全体の使用量増加によって、1ユニットあたりの金使用量の減少が補われる可能性があります。
高級スマートフォンの出荷が停滞し、その結果工場の稼働率が低下したため、ワイヤレス用途の金使用量は第4四半期に減少しました。ただし、WiFi 7の普及は拡大しており、WiFi 7インフラではWiFi 6よりもかなり多くのパワーアンプが必要になることから、今後半年ないし1年程度はワイヤレス分野の需要が伸びる可能性があります。低軌道衛星(LEOS)3 の需要も増加が続くと見込まれており、それに対応するために多くの地上局のアップグレードが必要になることが予想されます。この2つの用途では、回復しつつある高級スマートフォン分野とともに、今後半年ないし1年程度は、ワイヤレス需要が回復すると予想されています。
発光ダイオード(LED)分野では、バックライト用部品の需要が減少したことから、第4四半期に小幅な減少を記録しました。メーカーがコスト削減に力を入れるようになったため、(一般に金の使用量が少なく、不要な場合もある)ミニLEDやマイクロLEDなどの新しい技術も、さまざまな用途に広く浸透し始めています。
しかし、こうした減少傾向を相殺する成長分野もいくつかあります。最先端3DセンサーやIRセンサーの売上は引き続き伸びており、さまざまな分野で用途が拡大しています。自動車業界では引き続き、最先端型センサーに対する新たな需要が見込まれています。たとえばEUは、2026年7月までにすべての新車に先進運転者注意散漫警告(ADDW)システムの搭載を義務付ける規制を発表しました4 。これらの相反する要因は、2025年を通じて概ね相互に打ち消し合っていくことが予想されます。
最後に、メモリ分野の金需要は第4四半期に若干増加しました。その主な要因は、AI関連用途によって大容量ソリッドステートドライブ(SSD)5 の出荷量が増加したことや、高性能コンピューターやデータセンターインフラに対する力強い需要です。先頃、世界半導体市場統計グループは好調な下半期を受け、今年の予想成長率を前年同期比19%に上方修正し、2025年も成長は続くと見込んでいることを明らかにしました6 。市場をリードするメーカーであるSKハイニックスとサムスンが発表したNANDメモリチップの最近の進歩は7 、この分野の金需要にとっては多少なりとも脅威となる可能性があります。3層NANDチップは、従来の技術よりも必要とする金ボンディングワイヤが少なくなると考えられています。
2025年のメモリの見通しは、在庫調整により第1四半期は低調ながら、その後は徐々に需要が回復すると予想されています。
総計レベルでは、世界の主要エレクトロニクス製品加工拠点4ヶ国のうち3ヶ国が、第4四半期に金需要の若干増を記録しました。中国本土および香港が19.8トン(+1%)、日本が19.1トン(+2.8%)、米国が18.2トン(+6.8%)でした。一方、韓国は6.3トンの減少(-1.1%)となりました。
その他の産業用途と歯科用途
第4四半期における、その他の産業用途および装飾用途に対する世界全体の金需要は前年同期比マイナス4%でした。その主な要因は、ブランドアクセサリーの販売低迷と小売業者による在庫調整によって、イタリアと東アジアで喪失が生じたことによるものです。対照的に、インドでは金価格の高騰によって純金製品に手が届かなくなったことで、金メッキ品や金メッキ宝飾品の購入が増え、需要が5%増加しました。歯科用途の金使用量は引き続き減少し、第4四半期は前年同期比で6%の減少でした。
脚注
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LEO衛星は、地球表面に比較的近い周回軌道を飛行し、遠隔地にインターネットサービスを提供することができる。 World Economic Forum | How low-earth orbit satellite technology can connect the unconnected | Feb 2022.