投資

5 February, 2025

2024年の世界の投資は4年ぶりの高水準で、年間26%という金の驚異的なリターンを後押ししました。

  • 年間総投資は1,180トンで、金額ベースでは900億米ドルでした。
  • 金ETF需要が高まり、特に下半期に米国上場ファンドに資金が流入したことが、投資全体の増加を促しました。
  • 金地金・金貨投資の需要は、インドと中国での伸びが欧米での減少を相殺して、2023年並みでした。
トン 2023 2024 前年同期比
投資 945.5 1,179.5 25
金地金・金貨 1,189.8 1,186.3 0
インド 185.2 239.4 29
中国:本土 279.5 336.2 20
金を裏付けとするETF -244.2 -6.8 -

金の年間投資は25%増加し、年間の伸びは2020年以降で最大となりました。この増分は、金利の引き下げ、地政学的な不確実性、金価格の動向が金ETFへの流入を呼び込んだ下半期に集中しました。

金地金・金貨需要は横ばいの1,186トンでしたが、投資額では23%増加し、過去最高の910億米ドルに達しました。

OTC投資は年間の大半の期間で堅調でした。このカテゴリーは、他のカテゴリーの需給バランスの統計残差を表すとともに、場外市場でのフローを捉えます。この市場は地政学的/経済的リスクのヘッジを求める富裕投資家の需要を徐々に反映するようになっています。最近の価格動向が、こうした流れに拍車をかけています。

ETF

世界の金ETFは2四半期連続で流入を記録しました。今期、運用残高は19トン増加しました。第1四半期の大規模な流出が下半期に増加に転じたことで、2024年の正味の結果はごくわずかな流出(7トン)となりました。

世界の金ETF運用残高は、4月1 に3,080トンと4年ぶりの低水準に落ち込んだ後、年末にかけて(11月のわずかな減少を除いて)回復し、年初に非常に近い水準で1年を終えました(年初の3,226トンに対して3,219トン)。地政学的な不確実性の高まり、将来の金利動向に対する観測の変化、2010年以降で最も力強い金の値動きがすべて、この増加の重要な要因になりました。

 

図6:2024年下半期に金ETFへの流入が急増し、上半期の流出がほぼ帳消しに

四半期の地域別金ETF需要(トン)と世界の運用資産残高(10億米ドル)*

図6:2024年下半期に金ETFへの流入が急増し、上半期の流出がほぼ帳消しに

図6:2024年下半期に金ETFへの流入が急増し、上半期の流出がほぼ帳消しに
四半期の地域別金ETF需要(トン)と世界の運用資産残高(10億米ドル)*
*データは2024年12月31日現在。 出所:ブルームバーグ、企業発表資料、ICEベンチマーク・アドミニストレーション、ワールド ゴールド カウンシル

出所: ブルームバーグ, 企業発表資料, ICEベンチマーク・アドミニストレーション, ワールド ゴールド カウンシル; 免責事項

*データは2024年12月31日現在。

表3:国別の合計金地金・金貨需要(トン)

  2023年 2024年 前年比 2023年
第4四半期
2024年
第4四半期
前年同期比
インド 185.2 239.4 29 66.7 76.0 14
パキスタン 21.9 19.0 -13 5.3 5.6 5
スリランカ - - - - - - - -
中華圏 287.2 345.7 20 85.0 86.2 1
中国:本土 279.5 336.2 20 82.7 83.6 1
香港特別行政区 1.2 1.5 24 0.3 0.4 25
台湾 6.4 8.0 25 2.0 2.2 15
日本 -0.4 2.5 - -1.3 -1.3 -
インドネシア 20.6 24.5 19 4.5 5.8 29
マレーシア 5.3 6.4 21 1.6 2.0 24
シンガポール 5.3 6.5 22 1.6 1.9 19
韓国 15.3 19.4 26 4.6 5.9 29
タイ 34.0 39.8 17 12.1 14.6 20
ベトナム 40.4 42.1 4 9.9 8.2 -17
オーストラリア 13.4 11.1 -17 3.0 3.6 20
中東 114.1 109.5 -4 24.5 27.6 13
サウジアラビア 14.1 15.4 9 3.6 4.3 20
UAE 11.5 13.3 15 3.1 3.4 10
クウェート 5.2 6.1 16 1.3 1.4 8
エジプト 30.3 24.0 -21 5.5 5.9 7
イラン 44.4 42.3 -5 8.9 10.4 18
その他の中東 8.5 8.5 0 2.2 2.2 2
トルコ 150.1 112.2 -25 29.6 23.5 -21
ロシア連邦 31.5 34.4 9 7.5 9.0 20
米州 127.9 87.8 -31 28.4 22.0 -23
米国 115.7 77.8 -33 25.9 18.9 -27
カナダ 9.4 7.5 -21 1.7 2.5 46
メキシコ 1.1 0.8 -24 0.3 0.2 -52
ブラジル 1.7 1.8 4 0.5 0.5 2
欧州(CISを除く) 132.1 66.6 -50 30.2 23.1 -24
フランス 2.7 -2.6 - -0.4 -0.5 -
ドイツ 46.9 16.8 -64 11.3 8.7 -23
イタリア - - - - - - - -
スペイン - - - - - - - -
英国 12.8 10.0 -22 2.1 1.8 -11
スイス 35.8 16.9 -53 8.8 5.4 -39
オーストリア 4.1 2.4 -40 1.1 1.1 8
その他の欧州 29.9 23.1 -23 7.3 6.5 -11
小計 1,183.9 1,166.9 -1 313.2 313.7 0
その他・在庫変動 5.9 19.4 228 2.0 11.7 483
世界合計 1,189.8 1,186.3 0 315.2 325.4 3

出所:メタルズ・フォーカス、リフィニティブGFMS、ICEベンチマーク・アドミニストレーション、ワールド ゴールド カウンシル

このトレンドの最前線にいたのが、アジアで上場するファンドです。インドと中国の異例の成長が牽引して、運用残高は年間で78トンの増加を記録し、過去最高の216トンに達しました。これは北米で上場するファンドの8トン増をはるかに上回りますが、北米についても、2020年以降で初めて年間の増加を記録したことは注目に値します。「その他」地域に上場するファンドは5トンの小幅な増加でした。 

欧州のファンドは例外で、4年連続で運用残高が減少しました。ただし減少幅は98トンで、180トン減少した2023年と比べると大いに改善しました。金を裏付けとするETFのフローの詳細なレビューは、ETFフローに関するコメンタリーをご覧ください。

金地金・金貨

世界の金地金・金貨投資は、好調のうちに2024年を終えました。第4四半期の需要は前四半期比で20%増加しました。金価格は10月に新記録を打ち立てた後、11月に調整が入りました。世界の投資家は力強い上昇トレンドが再開することを期待して、これを金を安価に購入する好機と捉えました。

2024年は1年を通して米ドルが高かったことから、他の通貨建ての金価格はさらに強力な値動きを示しました。これにより、金は素晴らしい投資成績を上げて世界の市場で注目を集めると同時に、広く知られる為替ヘッジとしての役割も明確に果たしました。

年間需要は1,180トンと2023年並みの水準にとどまったものの、過去10年間の平均は1,073トンだったため、好調な結果と言えます。

中国

第4四半期の中国の金地金・金貨投資は回復し、年間合計は過去10年以上で最高となりました。金の現地通貨建て価格は2024年に38回最高値を更新し、投資家のレーダーにしっかりと映り続けました。

国内経済の不透明感、歴史的な低水準まで急落した国債利回り、株式市場のボラティリティの上昇、引き続き精彩を欠く不動産市場などを背景として、中国の投資家は投資可能な代替資産の欠如に直面しました。さらに、人民元が米ドルに対して3%下落したことを受けて、投資家は価値保存のニーズを満たすために金に向かうようになりました。 

ワールド ゴールド カウンシルでは、今年は中国人民銀行から金購入の発表があったことも、投資家のセンチメントを押し上げたと見ています。

2025年も、マクロ環境に支えられて投資需要が好調さを維持すると予想しています。金利はさらに低下する見込みです。その場合は金保有の機会コストが減少し、(2025年のFRBの追加利下げ観測が大幅に後退していることから)中国と米国の金利差が拡大すれば、現地通貨に継続的な圧力がかかる可能性が高いでしょう。中国人民銀行から金購入の発表が続けば、金投資のセンチメントはさらに改善するかもしれません。

しかし、今後も金のパフォーマンスと他の資産との関係が鍵となるでしょう。株式など現地資産が強力なリターンをもたらす場合は、投資家が金から離れる可能性があります。

インド

第4四半期のインドの金投資は76トンと、異例のパフォーマンスを見せた第3四半期に匹敵する好調さを維持し、通年の需要は239トンと、2013年以来の高水準になりました。現地通貨ベースでは1.5兆インド・ルピー(180億米ドル)の需要に相当し、従来の最高記録だった2023年を60%上回りました。

他の多くの市場と同様に、年間を通じた金価格の上昇により、強固な投資需要が生まれました。7月の関税引き下げ後、価格はすぐに上昇を再開し、その後11月の調整局面は、安値買いで運用残高の積み増しを狙う投資家を引きつけました。

10月と11月にはダンテラスとディワリという縁起の良い祝祭期間があり、最終四半期の購入が活性化しました。少量の投資用金地金・金貨を、場合によっては10~15分という超短時間で配達する電子商取引プラットフォームがあることから、大都市ではさらに需要が促進されました2

国内株式市場の上半期のリターンが今ひとつで、第3四半期に過去最高値を付けた後は顕著な下向きの調整が入るなど、金以外の資産のパフォーマンスが比較的低調だったことも、金に味方しました。

ワールド ゴールド カウンシルでは、インドの旺盛な投資需要のトレンドが2025年も継続し、金への投資意欲が金のETFや投資信託にも拡大すると予想しています。最近の金の強さがさらに続けば、金への強い投資意欲が続くでしょう。

 

図7:2024年の世界の金地金・金貨投資は横ばいで、アジアの伸びが欧米の弱さを相殺

四半期の地域別金地金・金貨投資(トンおよび金額、10億米ドル)*

図7:2024年の世界の金地金・金貨投資は横ばいで、アジアの伸びが欧米の弱さを相殺

図7:2024年の世界の金地金・金貨投資は横ばいで、アジアの伸びが欧米の弱さを相殺
四半期の地域別金地金・金貨投資(トンおよび金額、10億米ドル)*
*データは2024年12月31日現在。 出所:メタルズフォーカス、ICEベンチマーク・アドミニストレーション、リフィニティブGFMS、ワールド ゴールド カウンシル

出所: メタルズ・フォーカス, ICEベンチマーク・アドミニストレーション, リフィニティブGFMS, ワールド ゴールド カウンシル; 免責事項

*データは2024年12月31日現在。

中東とトルコ

トルコのリテール投資需要は、過去最高だった2023年を経て、2024年は25%減少しました。国内金利が高いため、投資家は金から離れて、国内貯蓄口座やマネー・マーケット・ファンドがもたらす魅力的なリターンを求めました。

とはいえ、目を見張るような金価格のパフォーマンス――トルコ・リラ建ての1年のリターンは約50%――は、過去10年の平均値である66トンの2倍に迫る投資需要を生み出しました。そして現地通貨ベースの需要は、前年の年間記録を塗り替え、2,830億トルコ・リラ(27%増)に到達しました。

10月に金価格が高値を更新した後、調整的な下落を好機と見た買いを呼び込んだことから、比較的低調だった第3四半期と比べて今期は需要が急増しました。

トルコの投資は、過去の水準と比べると高い状態が続きそうですが、依然として高インフレ環境にあることから、持続的な金融引き締め政策の制約を受ける可能性があります。

中東の金投資需要は2023年の記録的な水準にはわずかに届きませんでしたが、歴史的に見れば非常に好調でした。年間需要は110トンで、ワールド ゴールド カウンシルのデータシリーズの中では3番目の記録です。今期は、中東全体の投資家が一様に11月の金価格の下落に反応し、強力な上昇トレンドに回帰するという期待のもと、金保有高を追加/構築する好機として活用しました。

前年を下回った理由は、もっぱら前年比で減少したエジプトとイランにあります。ただしこれは、比較的好調だった2023年との比較であるため、より長期的な視点で見れば、両国とも健全な需要を維持しています。

また、サウジアラビア、UAE、クウェートでは投資家が金価格の値動きに引きつけられたことから、前年比で需要が改善しました。

 

図8:インドと中国の投資の増加が欧米の減速を相殺

国別金地金・金貨投資の前年比変化率(%)*

図8:インドと中国の投資の増加が欧米の減速を相殺

図8:インドと中国の投資の増加が欧米の減速を相殺
国別金地金・金貨投資の前年比変化率(%)*
*データは2024年12月31日現在。 出所:メタルズ・フォーカス、ワールド ゴールド カウンシル

出所: メタルズ・フォーカス, ワールド ゴールド カウンシル; 免責事項

*データは2024年12月31日現在。

欧米

2024年の米国の金投資は4四半期連続で前年同期を下回り、その結果、金地金・金貨の年間需要は2020年以降で最低となりました。このことはトンベースと金額ベースの需要の両方に当てはまります。とはいえ長期的な視点で見れば、トンベースの年間需要は10年間の平均を11%上回っており、依然として健全です。

金価格の値動きが大きな関心を集める中、投資は堅調さを維持していますが、市場の飽和と既存保有分の利益確定売りが相まって、この1年の需要が鈍化したと考えられます。事例報告によると、リテール投資で見られた減速は、富裕投資家の領域では生じていないようです。このセグメントの需要はOTCのデータに含まれます。

2024年の欧州のリテール金投資は、17年ぶりの低水準を記録しました。同地域の需要は、すでに低調だった2023年からさらに半減しました。減少の主な原因になったのがドイツとスイスで、金価格の高さが大規模な利益確定売りを促し、このことが健全さを保っていた新規投資需要を相殺しました。四半期を連続して見てみると、同地域では持続的な価格上昇を受けて下半期に投資が活発化しましたが、過去の平均と比べると極めて低調な状態が続いています。欧州全体が厳しい経済環境にあることから、2025年も、新規投資が大規模な現金化に打ち消されるというシナリオが継続する見込みです。

アセアン市場

本レポートの対象となるASEAN市場のすべてで、2024年に年間金投資需要の増加が見られ、各市場が数年来の最高値を記録しました。この成長の主な原動力は現地通貨の値動きで、投資家は金のヘッジ効果に注目しました。為替変動の結果、同地域全体で現地通貨建ての金のパフォーマンスが米ドル建ての金価格のリターンを上回ったため、投資の説得力が増しました。

ベトナムは今期の同地域のトレンドに反して、前年を下回りました。金の入手可能性が限られたことから、投資家の金地金の購入能力が制限され、その結果プレミアムが上昇しました。こうした環境下で、一部の投資家は購入対象をカイリングに切り替えました。これらのシンプルな金の指輪は宝飾品に分類されるものの、しばしば投資の代替として扱われます。

その他アジア諸国

日本の金地金・金貨需要は、2トン強と非常に小規模ながら、2018年以降で最も好調でした。日本の投資家は歴史的に、金価格の上昇時に売却する傾向があります。金価格が記録的に高かった1年を通じて需要が好調だったことには、金の魅力の拡大が反映されているようです。投資家はインフレヘッジや為替ヘッジとしての金の役割に加えて、リターン創出のポテンシャルにも徐々に注目するようになっています。

韓国の金投資商品の需要は2024年に急増しました。同市場は5四半期連続で、前年同期比2桁の力強い成長を見せています。この好調さの主な要因は金価格ですが、国内の政治対立や経済成長の低迷を背景に、第4四半期はさらに活性化しました。

オーストラリア

オーストラリアの金地金・金貨投資は、活気を見せて1年を終えたものの、年間ではまたも減速しました。今期は金価格の下落が投資家に購入機会をもたらしたため、需要が急激に持ち直しました。 

脚注

  1. 月末のデータを使用。月内の最低値とは異なる場合がある。

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