- 欧米からの現物投資が多くなくても、今年は、新興市場の中央銀行の継続的購入やリテール投資によって支えられて、金はワールド ゴールド カウンシルが2024の金の見通しに示した予測よりもはるかに強いリターンが期待できるでしょう。
- ここ数週間の驚くべき価格高騰により、リサイクル供給が増加し、宝飾品の需要が減少する可能性があります。ただし、地政学的リスクの高まりと一部の国において宝飾品が準投資的役割を果たしていることから、影響は抑えられることが考えられます。
- 生産者マージンが過去最高に近いレベルで推移し、北米における事業拡大と鉱山会社の低レベルのヘッジを考慮すると、鉱山供給量は記録を更新することが見込まれます。
今後の見通し
30 April, 2024
中央銀行とリテール投資が今年(2024年)の好調さを下支えします。欧米の投資家は模様眺め。
3月から4月にかけて、最高値を続けて更新した金価格は、最近になって調整局面に入ったと思われ、ワールド ゴールド カウンシルでは健全な展開だと認識しています。1今後数ヵ月で金価格の平準化が進めば、価格に敏感な購入層の一部は市場に戻ってくることになるでしょう。近々実施されると見られている欧州中央銀行による利下げのため、欧州では、金から利回りの良い債券へのシフトが変化する可能性があり、金ETFには上振れの可能性が残されています。米連邦準備制度理事会(FRB)による利下げに期待してきた北米のETF投資家はもうしばらく待たなければならないでしょう。経済のノーランディングに対する期待が高まりつつあり、高金利が続くことを示唆しています。しかし米国経済の強さは、金利政策の長期影響が遅れて生じることに助けられている面があり、表層的な感は否めず、その影響が本格的に感じられるようになるのは今年後半になるでしょう。そのため、米国の投資家はETF流入を引き起こす明確なシグナルを待たなければならないかもしれません。
投資
金地金・金貨需要は引き続き好調でしょう。大きく貢献するのは、今年、2017年以来の好調な四半期でスタートを切った中国です。一般家庭の家計の改善、中央銀行の持続的な金購入というポジティブな見本、国内株式市場および不動産市場の低迷と脆弱な通貨など、需要が手堅い水準を維持するうえで必要な条件が整っています。インドの金地金・金貨需要は、経済成長に基づいたモデルが示す水準を下回ってきました。モンスーン期の気象予報が良好であることや着実な経済成長への期待から、昨年よりも増加することが見込まれています。
ETF需要については、特に欧州において発生しないことが依然として目を引きます。一説には、欧州ではマイナス利回り債券を保有することを嫌った機関投資家が、数年前に金に移行したとのことです。過去1年(あるいはそれ以上前から)、金からプラス利回りの債券に切り換える動きがあったと思われますが、政策金利が引き下げられた場合、こうした動きを続けることは困難になる可能性があります。米国において4月はかすかな望みがありますが、持続的流入を引き起こすにはおそらく利下げが必要となるでしょう。ただインフレが続いていて、労働市場が堅調なことから、しばらくは待たなければならないでしょう。
他の地域では、中国のファンドが流入を着実に呼び込んでおり、4月19日までの4週間で29トンの流入があったのに対し、同時期の欧州では36トンが流出し、米国ではニュートラルフローでありました。
加工
おそらく今期の最も注目すべき特徴は、大幅な価格高騰の中で宝飾品需要が示した底堅さでしょう。ただし、価格の高騰は今期の終盤にかけて生じたものであり、第2四半期にはある程度需要が低迷する可能性があります。
中国の宝飾品需要は、今後年内に所得が増加し、価格が安定すれば、対前年比で横ばいから若干増での推移が予想されます。インドの宝飾品需要は引き続き好調な経済によってけん引されるでしょうが、金価格の高騰や総選挙に関連した不確実性が需要を圧迫する可能性があります。
テクノロジー需要は、特に半導体部門と自動車部門で着実に増加することが見込まれています。
中央銀行
新記録まであと少しに迫り、当初の(控えめな)予測を大きく上回った2023年でしたが、今後の展開は予断を許しません。中央銀行の買い越しは数年にわたって定着した傾向のようですが、最近の価格高騰を機に模様眺めに移行する中央銀行が出てくる可能性があります。同様に、今年に入ってからの大幅な価格上昇により、気に乗じて売却する中央銀行が出てくる可能性が高まっています。
報告された3月の購入量の減少は、準備資産のマネージャーがこのような水準での積み増しを躊躇したことを示唆している可能性があります。ただし、未報告の購入に関してはそのような抑制的動きは見られませんでした。今四半期も売却はきわめて少なかったものの、期後半の価格上昇を考慮すると、第2四半期にその影響が出る可能性があり、他の需要カテゴリーでも同様のことが起こることが考えられます。
供給
鉱山供給量は、拡張と増産によって、2018年の過去最高を更新することが予想されています。2
増加の内、約3分の2は、カナダ、中国、ガーナによるものと考えられます。北半球の冬が穏やかであったことにより、今期は好調なスタートを切ることができましたが、鉱山会社のヘッジポジションの大幅な変動により、総鉱山供給量は前年同期比で減少しました。
スポット価格は高止まりするだけでなく、コスト曲線の90パーセンタイルを上回るレベルで推移することが予想され、限界生産者にとっては積極的な生産スケジュールを継続する動機となるでしょう。AISCマージンは2020年のピークをもう少しで超えるところまで上昇しました。
ヘッジは小規模ながらプラスになることが予想されていますが、第1四半期において鉱山会社による一部の資金調達が終わりに近づいたため、ヘッジ解消につながった。先物がコンタンゴ状態であることもそうですが、価格の観点から、生産を現在のこうした価格レベルで固定するインセンティブがあります。
仮に、価格が高止まりした場合、今四半期の急速な価格上昇に反応したように、年間リサイクル量は増加するとモデルが示しています。ただし、特にタイのような国では、地政学的な懸念と市場に出せる在庫が少ないことにより、量が制限される可能性があります。また、価格が安定すれば、それに応じてリサイクルも減少する可能性が高まります。