第1四半期の総供給量は、記録的な鉱山生産量とリサイクルの増加により、3%増加しました。
- 第1四半期の鉱山生産量は前年同期比4%増加し、第1四半期としては過去最高の水準を記録しました。
- 金のリサイクル量は、金価格の上昇を受けて前年同期比で12%増加しました。
- 2024年の鉱山生産量が過去最高に達する見込みである一方、リサイクルも金価格の上昇によって限定的ながら促進される可能性があります。
30 April, 2024
トン | 2022年第4四 半期 |
2023年第4四 半期 |
前年同期比% | |
供給合計 | 1,206.4 | 1,238.3 | 3 | |
鉱山生産 | 855.1 | 893.0 | 4 | |
正味生産者ヘッジ | 39.4 | -5.5 | - | |
リサイクル金 | 311.9 | 350.8 | 12 |
出所:メタルズ・フォーカス、ワールド ゴールド カウンシル
2024年第1四半期、金の総供給量は前年同期比で4%増加しました。主な要因は、鉱山生産量が893トンと堅調だったこと(2000年までさかのぼるワールド ゴールド カウンシルのデータの中で第1四半期としては過去最高)と、リサイクルが前年同期比12%増の351トンとなったことです。総供給量はさらに増加したとみられますが、暫定的推定値はヘッジポジション残高合計が小幅に減少したことを示しています。ただし、このデータは、従来と同様に、鉱山会社が自社の四半期報告を発表した後に大幅に修正される可能性があります。
第1四半期の鉱山生産量は893トンで、以前の第1四半期の最高記録である2023年の855トンを4%上回りました。
しかし、前四半期比で見ると、生産量は主に季節変動によって5%減少しました。1年で最も寒い時期には、露天掘りや沖積鉱床でのオペレーションは縮小されるか、完全に停止される傾向があります。この傾向は、中国、ロシア、その他の中央アジア諸国で特に顕著です。南アフリカの金鉱業もクリスマスと新年の長い夏季休暇のために減産となっています。
本稿公表時点で入手可能なデータに基づくと、第1四半期の生産量が顕著に増加したのは以下の国でした1。
一部の国のオペレーションは、採掘、地質、天候に関する要因の組み合わせによって打撃を受けました。
地域別にみると、2024年第1四半期の鉱山生産量が最も大幅に増加したと報告されるのはアフリカとアジアであると推定されます。両地域の生産量は、それぞれガーナと中国の生産量増加により、前年同期比7%増加したとみられます。北米と中米・南米も、それぞれカナダとブラジルの生産量増加によって、金生産量が増加したと予想されます(北米は前年同期比5トン増、中米・南米は同3トン増)。2024年通年と今後5年間でみると、カナダでは鉱山の操業開始、増産、または拡大により、鉱山生産量の顕著な増加の報告が予想されます。
現在の予想に基づくと、2024年の鉱山生産量は好調なスタートを切っており、前年比で4%増加する見込みです。その結果、今年の鉱山生産量は、従来の記録である2018年の3,656トンを上回ると想定されます。
2023年第4四半期、金鉱業の生産コスト(AISC)の平均値は、入手可能な最新データに基づくと前年同期比7%上昇し、過去最高の1,342米ドル/オンスに達しました。業界の平均AISCは2023年の各四半期において上昇しましたが、2021年(11%上昇)と2022年(12%上昇の1,276米ドル/オンス)の急上昇に比べると、コストインフレは急激に鈍化しました。
入手可能な最新データによると、2023年第4四半期、デルタ調整後の世界の産金会社のヘッジポジション正味残高は16トン増の226トンとなりました。これにより、業界全体における年間のポジション正味残高の変化はプラス55トンとなり、世界のヘッジポジション正味残高の年間の増加量としては2014年以降で最大となりました。ワールド ゴールド カウンシルは第1四半期に少額のヘッジが解消されたと推定しています。ただし、最近の金の堅調さを鑑みるに、現在の6トン減という予想は、第1四半期の産金会社による発表が行われれば修正される可能性があります。
本レポートの前号では、「過去1年間は、金採掘会社はヘッジ活動の拡大に消極的であるという推測を試す有益なテスト期間となりました」と述べました。ワールド ゴールド カウンシルは2023年のヘッジポジション正味残高の増分の予想を(17トン増から55トン増へ)上方修正しましたが、上記の見解を維持しています。世界の産金会社のヘッジポジション正味残高は、前年同期比で32%増加したにもかかわらず、絶対量でみると低位にとどまっています。2016年と2017年(それぞれ259トンと234トン)は現在の水準を上回っていました。
第1四半期の金のリサイクルは、金価格の上昇に反応して351トン(前四半期比と前年同期比のいずれも12%増)に増加しました。リサイクル金の供給量は、第1四半期としては2014年以降で最高となり、四半期ごとの供給量としても2020年第3四半期以降で最高でした。
ほとんどの市場と地域で供給量の増加が見られ、金価格の上昇が共通のテーマとなりました。金市場ウォッチャーにとって、今四半期のリサイクル金の増加はサプライズではなかったでしょう。通常、金価格が急上昇すると、主に宝飾品を通じて金のリサイクル量も増加します。しかし、今回は金価格の上昇から予想される量に比べてリサイクル量が小幅な増加にとどまっています3。
主要市場の動向は以下の通りです。
リサイクル金の供給量の増加幅が予想を下回ったが、一方でほとんどの市場は金価格の上昇に反応しました。第2四半期初めの金価格の継続的な上昇が少しでも続いた場合、スクラップ供給のさらなる増加を促す可能性が高いでしょう。しかし、ワールド ゴールド カウンシルは、市場に出せる在庫が多くの地域でやや枯渇状態にあり、今後数四半期およびそれ以降においてリサイクル金の供給量の増加を妨げる可能性があるという見解を維持しています。