テクノロジー

30 April, 2024

エレクトロニクス製品分野におけるサプライチェーンの在庫補充が第1四半期の金需要を下支えしました。

  • 第1四半期の産業用途による金需要は前年同期比10%増の79トンとなりました。
  • この成長をけん引したのは、前年同期比13%増の64トンとなったエレクトロニクス製品分野の回復でした。
  • その他の産業用途は前年同期比2%増の12トンと小幅な増加を記録しましたが、歯科用途需要は長期にわたる減少が続いており、前年同期比5%減の2トンになりました。
トン 2022年第4四
半期
2023年第4四
半期
  前年同期比%
テクノロジー 71.2 78.6 10
エレクトロニクス 57.1 64.4 13
その他工業用 11.7 11.9 2
歯科用 2.4 2.3 -5

出所:メタルズ・フォーカス、ワールド ゴールド カウンシル

 2023年第4四半期に報告されたエレクトロニクス製品分野の回復は2024年初めも続き、東アジア諸国においてほとんどのセグメントで生産量が増加しまた。主な要因は、サプライチェーンの在庫補充と、AI関連の新たな事業機会でした。全体として、テクノロジー需要は年間を通じて上向きのトレンドが続くと予想されます。

エレクトロニクス

第1四半期のエレクトロニクス製品分野の金需要は増加しました。この回復の大きな要因は、AI関連のデバイスとインフラの成長が見込まれることであると報告されています。例えば、ガートナーのアナリストは、AI機能を搭載したPCとスマートフォンが力強く成長し1、従来型デバイスの需要が約2年間の減少期を経て安定化すると予想しています。

ワイヤレス機器分野からの需要は第1四半期に急増し、複数の領域で堅調な伸びが報告されました。サプライチェーン全体で枯渇した在庫の補充が勢いを増し、スマートフォンの新機種の発売がパワーアンプの需要増大につながりました2。クラウドコンピューティングの急成長がAIブームによって促進され、最先端の通信用半導体の需要が押し上げられました。一方で、低軌道衛星(LEOs)については、運営事業者が導入を加速し、新たな用途を拡大しているため、予想より速く採用が進んでいます。今後の展望としては、家電製品市場の安定化が続いていることに加えて、WiFi-6からWiFi-73への進化が、2024年を通じてさらなる支援材料になると予想されます。

 

図10:エレクトロニクスにおけるAI主導の堅調な回復がセクター全体の需要を押し上げる

テクノロジーセクターの四半期ごとの金使用量、および5年間の四半期平均(単位:トン*)

図10:エレクトロニクスにおけるAI主導の堅調な回復がセクター全体の需要を押し上げる

図10:エレクトロニクスにおけるAI主導の堅調な回復がセクター全体の需要を押し上げる
テクノロジーセクターの四半期ごとの金使用量、および5年間の四半期平均(単位:トン*)
*データは2024年3月31日時点。 出所:メタルズ・フォーカス、ワールド ゴールド カウンシル

*データは2024年3月31日時点。
出所:メタルズ・フォーカス、ワールド ゴールド カウンシル

 発光ダイオード(LED)分野でも、第1四半期に使用された金は前年同期より増加しました。主な要因としては、自動車需要が再び堅調となったことに加えて、パリ五輪やサッカーの2024年欧州選手権(ユーロ2024)などの大規模イベントの見通しに支えられ、ディスプレーとパネル向けの需要が再燃したことが挙げられます。2023年末のパネル業界の在庫が通常の水準だったことを受けて、今四半期は在庫補充の動きが強まり、生産設備の稼働率は5~10%上昇しました。ワールド ゴールド カウンシルは、今回のバックライトLED市場の回復について、少なくとも今年上半期の間は続くと予想しています。

伝統的に安定した需要源であるメモリ半導体でも、第1四半期の需要の伸びが報告されました。川下のユーザーがAI関連用途の特定部品の在庫を積み増したため、DRAMメモリとNANDフラッシュメモリの調達は大幅に増加しました。AIがこの力強い需要の原動力となり、高帯域幅メモリ(HBM)の需要を押し上げていることは確実と言えます4。この「AI主導のメモリの上昇サイクル」によって、半導体価格は今後2年にわたって反騰し、サムスンなどの大手メモリメーカーの業績は向上するでしょう。5

プリント基板(PCB)分野は、需要が小幅に減少した唯一の分野となりました。第1四半期は伝統的にPCBの需要が小さい時期ですが、家電製品メーカーは、下半期の見通しが不透明であることを理由に、注文について慎重な姿勢を取りました。また、PCBの製造拠点をタイ、ベトナム、マレーシアなどの東南アジア諸国へ移転する動きが続いており、PCB分野に大きな構造的変化が起きています6。しかし、自動車分野からの需要は堅調を維持しており、生産設備の稼働率は年間を通じて前四半期比で上昇すると予想されます。

 総計レベルでは、世界の主要エレクトロニクス製品加工拠点の全4ヵ国で、第1四半期の金需要が前年同期比で増加しました。日本 - 19トン(24.0%)、韓国 - 6トン(20.2%)、米国 - 17トン(1.6%)、中国本土および香港 - 17トン(18.5%)。

その他産業用途と歯科用途

第1四半期のその他産業用途は前年同期比2%増の12トンとなりました。主な要因は、前四半期と同様に、コロナ後の中国の回復でした。対照的に、イタリアでは価格とは無関係にメッキ製品への移行が起きたことから需要がやや落ち込みました。インドでは、低調な裁量的支出が贈答品需要の軟化につながり、金取引量が減少しました。歯科用途需要は構造的な減少によって前年同期比5%減の2トンとなりました。

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